Es hat die Rose sich beklagt Op.42-5 Aus Osten,Sechs Gesänge |
薔薇は不平を訴えた 東方より 6つの歌 |
Es hat die Rose sich beklagt, Daß gar zu schnell der Duft vergehe Den ihr den Lenz gegeben habe. Da hab' ich ihr zum Trost gesagt, Daß er durch meine Lieder wehe, Und dort ein ew'ges Leben habe. |
薔薇は不平を訴えた、 香りがあまりに早く失われてしまう、 それは春が与えてくれたものなのにと。 そこで私は薔薇を慰めて言った、 香りは私の歌を通して吹き渡り、 歌の中で永遠の生命をもつのだと。 |
詩はボーデンシュテット(Friedrich Martin von Bodenstedt : 1819-1892)によるが、もとになったのはアゼルバイジャンの詩人Mirza Schaffy(1794-1852)で、この詩人の作品には例えばイギリスの作曲家クィルターも付曲している。
ローベルト・フランツ(Robert Franz : 1815-1892)はシューマン、ブラームスらと同時期の作曲家だが、作風は慎ましやかで繊細、ピアノは歌にぴったり寄り添い、一人歩きすることはほとんど無く、演奏時間も1〜2分ぐらいの小品が多い。
しかし短い中に込められた、ささやかな世界は、聴き手の内面にそっと引っかかるものを残していく。
この曲でも2節の短い有節形式ながら、ブラームスのハンガリー舞曲第4番を彷彿とさせる前奏をもった哀愁漂うピアノと共に、もの哀しく美しい歌の旋律が心にひっそりと余韻を残す。
詩は簡素だが、生あるもののはかなさと、歌という表現によって得られる永続性というテーマは聴き手に訴えるものがある。
白井光子&ヘルの深い思いのこもった演奏(CAPRICCIO:1994年)やテーオ・アーダム&ドゥンケルの温もりを感じさせる演奏(Ars
Vivendi:録音年不詳)が素晴らしい。
( 2004.11.27 フランツ・ペーター )