愛国の花 |
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真白き富士のけだかさを こころの強い楯として 御国につくす女等(おみなら)は 輝く御代の山ざくら 地に咲き匂う国の花 老いたる若き諸共に 国難しのぐ冬の梅 かよわい力よくあわせ 銃後に励む凛々しさは ゆかしく匂う国の花 勇士の後(あと)を雄々しくも 家をば子をば守りゆく 優しい母や また妻は まごころ燃える 紅椿 うれしく匂う国の花 御稜威(みいつ)のしるし菊の花 ゆたかに香る日の本の 女(おみな)といえど生命がけ こぞりて咲いて美しく 光りて匂う国の花 |
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まだ戦争も本格的に泥沼化していなかった昭和12年、愛国的な歌謡にも気品がありました。優美なワルツで「桜」「梅」「椿」「菊」と花になぞらえた女性たちの姿を描き出すのはなかなかに美しく素敵なメロディです。レコードでは渡辺はま子が女声合唱と共に吹き込んでおり、その澄んだ声は暗い世相を忘れさせるかのようです。インドネシアの大統領だったスカルノが愛し、自らインドネシア語の歌詞をつけてBUNGA SAKURA(サクラの花)という歌にしたのだそうです。古関の作品の中でも隠れたファンの多い傑作と言えるかもしれません。
( 2017.02.04 藤井宏行 )