Chanson perpetuelle Op.37 |
終わりなき歌 |
Bois frissonnants,ciel étoilé Mon bien-aimé s'en est allé Emportant mon coeur désolé. Vents,que vos plaintives rumeurs, Que vos chants,rossignols charmeurs, Aillent lui dire que je meurs. Le premier soir qu'il vint ici, Mon âme fut à sa merci; De fierté je n'eus plus souci. Mes regards étaient pleins d'aveux. Il me prit dans ses bras nerveux Et me baisa près des cheveux. J'en eus un grand frémissement. Et puis je ne sais comment Il est devenu mon amant. Je lui disais: “Tu m'aimeras Aussi longtemps que tu pourras.” Je ne dormais bien qu'en ses bras. Mais lui,sentant son coeur éteint, S'en est allé l'autre matin Sans moi,dans un pays lointain. Puisque je n'ai plus mon ami, Je mourrai dans l'étang,parmi Les fleurs sous le flot endormi. Sur le bord arrivée,au vent Je dirai son nom,en rêvant Que là je l'attendis souvent. Et comme en un linceul doré, Dans mes cheveux défaits,au gré Du vent je m'abandonnerai. Les bonheurs passés verseront Leur douce lueur sur mon front, Et les joncs verts m'enlaceront. Et mon sein croira,frémissant Sous l'enlacement caressant, Subir l'étreinte de l'absent. |
森は震え、星はきらめく 私の恋人は行ってしまった 私のすさんだ心を奪い去って 風よ、ひそやかなそのつぶやきで かわいい夜鶯よ、お前の歌で あのひとに伝えておくれ、私は死んでいくのだと あのひとが初めて現れた夜から 私の心は彼のなすがまま 誇りも何もなくしてしまった 私のまなざしが多くの想いを訴えかけ 彼は私を強く腕に抱いた そして髪にくちづけをした 私は激しく震え その時からなぜだか分からないけれど 彼は私を愛してくれた 私は彼に言った: 「私を愛して あなたの愛が続く限り」と その腕の中でないと眠れなくさえなってしまった けれど、あの人は気持ちが冷めてしまい ある朝、旅立ってしまった 私を置いて 遠い異国に 私にあの人はもういないのだから この湖に身を投げて死んでしまおう 流れに浮かぶ花に囲まれ、水の下で眠るの 湖のほとりに来て、風に向かい 私はあのひとの名を呼ぶ、夢見心地で あのひとをここで待っていたことを思い出しながら 金色の死装束を着てるみたいに 私の振りほどいた髪に包まれ 私は風に身を投げる... 昔の楽しい想い出が 頭の中をよぎり そして私は緑の葦に吸い込まれる 私の心は信じてるの、震えながら 絡み付く葦の葉に撫でられて これがここにいない人の抱擁なのだと! |
ショーソンの歌曲はフォーレの後期作品のような繊細な雰囲気と、たゆたうようなほのかな抒情が聴き物かと思いますが、それだけに多くのフランス歌曲に聴かれるような魅惑的な旋律美には乏しく、通好みの作品が多いように思います。私も彼の室内楽は結構好きなのですが、歌曲に関してはピアノ伴奏だとどうしても単調に聴こえて、世評の高いスゼーやノーマン、シュトゥッツマンの録音を聴いてもいまひとつピンとこない鬼門の作曲家です。
ただ、唯一ピアノと弦楽4重奏の伴奏で6分以上もかけて歌われるこの「終わりなき歌」だけは、ショーソンの室内楽の傑作「ピアノ、バイオリンと弦楽4重奏による協奏曲」に通じる美しいメロディーと、繊細さの中にも濃密な官能美を感じさせて昔から愛聴してきた作品でした。ただ、詩はあまりよく読んだことがなかったので、これがこんなに情念のたぎっている失恋の歌とは今まで思ってもみませんでした。確かにこれなら濃密な官能美があってもおかしくない...
ちなみにこれは事故で短い生涯を閉じたショーソンの完成された最後の作品なのだそうです。
冒頭の憂愁漂うピアノと弦の掛け合いから素敵ですが、ソプラノがそこに引き摺るような哀歌を奏で、そして彼との出会いの回想部分で一旦穏やかになった表情が彼の旅立ちと共に再び冒頭の悲しきメロディーが流れる中、ヴァイオリンの感情が爆発するところが大変印象的です。弦楽4重奏を伴奏に使った歌曲はこういう憂愁の表情を表すには打ってつけな気がしますが、その中でも屈指の魅力を持つ作品だと思います。
CDでは、アンドレエ・エスポジトのソプラノにバルビゼのピアノ、パレナン弦楽四重奏団の伴奏によるEMI盤が素敵です。カップリングが同じテイストの「ピアノ、バイオリンと弦楽4重奏による協奏曲」で、ショーソンのたゆたうような弦楽器のメロディの魅力が思い切り堪能できます。演奏は緻密さに欠けると言われていたりもしますが、逆にこのもわっとしたところが「エスプリ」とも言える訳でもあり、最初に聴く盤としてお勧めです。
シュトゥッツマンの録音(BMG)は、歌はとても素晴らしいと思うのですが残念ながら伴奏がピアノ独奏です。弦楽器の響きが絡み合ってこその曲なのでこれは非常に惜しいところです。
あとはアンネ・ゾフィー・オッター(DG)やジェシー・ノーマン(Erato)など大御所の素敵な録音が聴き物でしょうか。
ちょっと濃すぎるかも知れませんけれども。
( 2003.09.14 藤井宏行 )