TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Nature -The Gentlest Mother    
  Twelve poems of Emily Dickinson
自然-すべてのもののやさしいおかあさんは  
     エミリー・ディキンソンの12の詩による歌曲

詩: ディキンソン (Emily Elizabeth Dickinson,1830-1886) アメリカ
      Nature -The Gentlest Mother

曲: コープランド (Aaron Copland,1900-1990) アメリカ   歌詞言語: 英語


Nature - the Gentlest Mother is,
Impatient of no Child -
The feeblest - or the waywardest -
Her Admonition mild -

In Forest - and the Hill -
By Traveler - be heard -
Retraining Rampant Squirrel -
Or too impetuous Bird -

How fair Her Conversation -
A Summer Afternoon
Her Household - Her Assembly -
And when the Sun go down -

Her Voice among the Aisles
Incite the timid prayer
of the minutest Cricket -
The most unworthy Flower -

When all the Children sleep -
She turns as long away
As will suffice to light Her lamps -
Then bending from the Sky -

With infinite Affection -
And infiniter Care -
Her Golden finger on her lip -
Wills Silence - Everywhere -

自然-すべてのものの優しいおかあさんは
子供に決していらついたりはしません-
どんなに弱弱しい、-あるいはわがままな子-にも
彼女のかける言葉は穏やかです

森の中で、-丘の上-で
旅する人には-ほら、聞こえる-でしょう
いたずらもののリスや-
乱暴者の鳥をしつけている声が-

なんてさわやかな言葉なんでしょう-
夏の昼下がりに聞こえる声
彼女の家の中でも、-礼拝のときも-
そして日が沈むときも-

礼拝堂の廊下で聞くその声は
臆病な祈り手たちをさとします
ちいさなちいさなコオロギや-
ちっとも目立たない花のような者たちを-

子供たちが皆、眠りについたら-
明かりをつけても良いところまで-
彼女はそっと遠ざかり
そして空からかがみこみます-

限りない愛情と-
それよりもっと大きな気遣いで-
唇に、美しい人差指をあてて-
静かにするように示します。-すべての場所-に...


「母なる大自然」とかいう紋切り型の言葉がありますが、そんな自然の擬人化という意味にとどまらず、この詩はアメリカ東海岸の美しい森を思わせるとても素敵な情景を描いています。ディキンソンという人は言葉の使い方にドキッとするような新鮮さがあって、英米の詩人の中でも不思議な人気を誇る人ですが、歌曲の世界では付けられた曲はけっこうあるにも関わらず、あまりメジャーな作品がないのが興味深い人でもあります。
(アメリカのクラシック系の作曲家たちが魅力的な作品を書いているにも関わらずほとんど知られていないのがその最大の理由???)
その中でも一番有名なのは数少ないアメリカの著名クラシック作曲家のひとり、アーロン・コープランドのものでしょうか。彼はディキンソンの12の詩による歌曲という作品を書いていて、その第一曲目がこの曲です。鳥の鳴き声を模したようなシンコペーションのピアノ伴奏に乗って、これもまた弾むような歌声がこの愛すべき、美しい詩情を歌います。
ロバータ・アレクサンダーの入れたコープランド歌曲集(ETCETERA)、あるいはアンドレ・プレヴィンのピアノ伴奏で今をときめくバーバラ・ボニーの録音(Decca)など、意外と有名どころの歌手が録音している作品ですが、もし手に入るのならば、ドーン・アップショウが歌っている管弦楽に編曲された伴奏(ヴォルフ指揮セントポール室内管)のものを(TELDEC)。この曲からにじみ出てくるアメリカ情緒がとても魅力的に演奏されています。コープランドのオーケストレーションは古きよきアメリカの情景を彷彿とさせる作品が多いですが、この曲でもその美質が存分に発揮されており、それが詩の雰囲気と溶け合って実に良いのです。鳥の声を模した木管と声の掛け合いなど溜息がでます。コープランドはこの歌曲集からこの曲を含めて8篇を管弦楽伴奏に編曲しているのですが、ピアノ伴奏のオリジナルほどには他にあまり録音がないのが残念なところです。
(2004.10.16)

この歌曲集の全訳を試みるにあたり、訳詞を少々見直しました。
コープランドが作曲した1950年当時、ディキンソンの詩はまだ十分に研究されておらず、カットされていたり詩句が違っていたりと他の人の手が入ったものしか出版されていなかったために、この歌曲集中で歌われる歌詞には現在知られているディキンソンの詩と内容が違っているところも多いようです(中には明らかに間違っていて意味の通らないようなものも結構あります。もっとも詩が難解なので意味が通っているのかいないのかすら分からないことがほとんどですが)。
ここではコープランドがメロディをつけたものに従って訳しました。既訳で手に入るものと大きく違っていることもあるかと思いますがどうぞご了承ください。またカンマやダッシュの付け方は必ずしも正確ではないかもしれません。アメリカではこの歌曲集に的を絞っての詳細な研究書なども出ているようですので、必要な方はそちらをご参照ください。

( 2008.08.01 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ