聖夜連祷 |
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マリヤさま マリヤさま そとは吹雪の暗(やみ)の夜・・・ マリヤさま マリヤさま 吹雪のなかに鳴る鐘は今宵も甘く このみ寺 この聖壇の前のみは おん顔もことに明るく ひざまづき、み足にふるる わが唇(くち)も心もきよし マリヤさま マリヤさま、 外は吹雪の暗の夜 いつも夜のみ・・・ マリヤさま マリヤさま 額づくこの心のみ おん顔の如く明るし |
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川路柳虹の1922年の詩集「温室の花」に何篇かクリスマスのことを題材とした詩があります。サンタクロースとかも出て来てなかなかに面白いのですが(国会図書館のデジタルライブラリーでオンラインで閲覧できます)、そのうちの一篇がこの「聖夜連祷」 詩集では副題に−少女の歌える−とあります。大正モダンの産物として竹久夢二でも絵にしていそうな情景なのですが、この詩になんと「どこかで春が」や「揺りかごのうた」の草川信がメロディを1924につけていたということを知りたいへん驚かされました。こういった著作権切れの楽譜を提供して下さっているd-scoreというサイトがあるのですが、そこで楽譜の提供だけでなく、Midiとして雰囲気だけは掴める環境を与えて下さったことはたいへん有難いことです(Youtubeにアップされています)。伴奏はオルガンで、女声3部合唱(女声という指定はないですが、川路の詩の「少女の歌える」という副題といい、曲の雰囲気といいこれは女声(もしくは児童)合唱の曲であるべきですね。絶妙なフォーレばりの転調といい、雰囲気はそっくりそのまま教会音楽、ヨーロッパのクリスマスキャロル集に紛れ込んでいてもまるで違和感ないようなつくりの、しかも絶妙に美しい音楽です。こんな素敵な曲が今やほとんど知られることなく埋もれてしまっているのはあまりに惜しい。まあ確かに少々凝り過ぎていて気軽に歌える歌ではないのではありますが。
( 2016.12.25 藤井宏行 )