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Solo for Voice 67    
 
独唱のための第67番  
    

詩: ケージ (John Milton Cage Jr,1912-1992) アメリカ
      

曲: ケージ (John Milton Cage Jr,1912-1992) アメリカ   歌詞言語: ?


ヘホ・ワウ・ッッ(裏声)
ダヴァ(がなり声)
ヘッホ・ワウワウワウ・ゥ(裏声)
ワウワウ(がなり声)
ヘッホ・ワウワウ(裏声)
ワウワウウェウェウェ(がなり声)
ワウ・ワウワウワウ(裏声)
ワッヘ・ウェ(裏声)
オワヂ・ウェウェ(がなり声)
ヘホ・ヘホ(裏声)
??ものの壊れる音??

〜以下同じように延々2分続きます。一応歌詞はあるのですが
何度聴いても私にはこのように聴こえます。



現代物のブッ飛び作品ならやはりこの人、ケージを忘れるわけにはいかないでしょう。もちろんもっと過激なことをしている人はいくらでもいますけれども、それが芸(芸術ではない。念のため)の域に達していないと、往来をただ叫びながら裸で駆け回っているのを見せられるようなものなので、あまり金を払ってまで聴きたいと思いません。
その点では、ケージは以前ご紹介したバーベリアンとは別の路線で、人間の声の可能性を極限にまで広げたという意味で興味深いです。以前ご紹介したバーベリアンの「ストリプソディ」が、ジム・キャリー流のスタンドアップ・コメディだとすれば、このケージ作品はいわば江戸屋猫八・小猫流の動物の鳴き声模写を彷彿とさせる味わいで聴かせる芸でしょうか?
というのはこの曲、英語やその他言語の地理用語(日本語もある)を、裏声とがなり声で交互に歌うというものなのですが、私はどう頑張って聴いても、小犬と大型犬が喧嘩しているようにしか聴こえません。
が、それが一度聴いただけで頭から離れなくなるだけのインパクトを与えてくれ、ついにここにこうしてご紹介するまでに至ったわけです。
(時々入る、物の壊れる音もポイント高し)
New Albionにジョアン・ラ・バーバラ(女声)が入れているケージの声楽作品集「Singing Through」の中でも、この曲はひときわ異彩を放っています。意外とケージ晩年の声楽作品は中世の宗教音楽のような静寂で枯れた味がするものですから、こんなのが出てくると思わず笑ってしまうしかありません。彼の作品で特筆すべきは絶妙な間の取り方にあり、さすがピアノの奇曲「4分33秒」(ピアニストが4分33秒間ピアノの前にただ座っているだけの作品)の作曲家だけのことはあるなあと妙なところに感心させられてしまいます。

( 1999.05.18 藤井宏行 )


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