Hoffärtig seid Ihr,schönes Kind,und geht Italienisches Liederbuch |
ふんぞり返っておいでだな、麗しき娘よ イタリア歌曲集 |
Hoffärtig seid Ihr,schönes Kind,und geht Mit Euren Freiern um auf stolzem Fuß. Spricht man Euch an,kaum daß Ihr Rede steht, Als kostet' Euch zu viel ein holder Gruß. Bist keines Alexanders Töchterlein, Kein Königreich wird deine Mitgift sein, Und willst du nicht das Gold,so nimm das Zinn; Willst du nicht Liebe,nimm Verachtung hin. |
ふんぞり返っておいでだな、麗しき娘よ、 どの求愛者に対してもすかしていやがるぜ。 話しかけられたって、ろくすっぽ返事もしねえ。 あんたたちなんか御挨拶さしあげるのに値しないのよとでも言わんばかり。 アレクサンドロス大王の娘じゃあるめえし、 嫁入り道具に国がくっついてくる御身分でもないだろ。 金(きん)が欲しくねえのなら錫(すず)でも持っていきやがれ。 愛が欲しくねえのなら軽蔑でもしてもらえ。 |
お高くとまった身の程わきまえない女性に対して、憤懣を爆発させる男の激しい歌。この怒れる男性も「求愛者」の一人なのだろう。そっちがいつまでもそんな態度を改めないのなら、こっちから願い下げだと言わんばかりに、「軽蔑でもしてもらえ」の後のピアノの一撃がすべてを物語っている。この「軽蔑」(Verachtung)という単語に込める歌手の想いが聴きどころの一つである。
ちなみにアレクサンドロス大王(BC356〜BC323)はBC336年にマケドニアの王に即位して、東征の結果、ペルシャを破り、インダス河ほとりまでの広大な領土を獲得した人物であり、高慢な女性に皮肉を浴びせるのにぴったりのたとえだということだろう。
ベーア&ドイチュ:歯切れのいい発音でベーアが積もり積もった不満を爆発させて上手い。ドイチュの雄弁なピアノも見事。
シュライアー&エンゲル:皮肉っぽい表現が実にはまっている。特に最後の捨て台詞の「hin」の見放したような語りの見事さ。エンゲルは鋭い刃物のような切れ味で、上手さが際立っている。
F=ディースカウ&デームス:この種の語り口の巧みさはF=ディースカウの独壇場だ。デームスもいつになく力強い。
( 2003.11.4 フランツ・ペーター )