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Wer that deinem Fu:sllein weh?    
  Spanisches Liederbuch(Weltliche Lieder)
世俗歌曲第30番『誰が君の可愛い足にけがをさせたんだい?』  
     スペイン歌曲集_世俗歌曲集

詩: ガイベル (Franz Emanuel August Geibel ,1815-1884) ドイツ
    Spanisches Liederbuch - 2. Weltliche Lieder(スペインの歌の本 2.世俗歌曲) 64 Wer that deinem Fu:sllein weh? 原詩:スペイン詞

曲: ヴォルフ (Hugo Wolf,1860-1903) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


»Wer tat deinem Füßlein weh?
La Marioneta,
Deiner Ferse weiß wie Schnee?
La Marion.«

Sag Euch an,was krank mich macht,
Will kein Wörtlein Euch verschweigen:
Ging zum Rosenbusch zur Nacht,
Brach ein Röslein von den Zweigen;
Trat auf einen Dorn im Gang,
La Marioneta,
Der mir bis ins Herze drang,
La Marion.

Sag Euch alle meine Pein,
Freund,und will Euch nicht berücken:
Ging in einem Wald allein,
Eine Lilie mir zu pflücken;
Traf ein Stachel scharf mich dort,
La Marioneta,
War ein süßes Liebeswort,
La Marion.

Sag Euch mit Aufrichtigkeit
Meine Krankheit,meine Wunde:
In den Garten ging ich heut,
Wo die schönste Nelke stunde;
Hat ein Span mich dort verletzt,
La Marioneta,
Blutet fort und fort bis jetzt,
La Marion.

»Schöne Dame,wenn Ihr wollt,
Bin ein Wundarzt guter Weise,
Will die Wund' Euch stillen leise,
Daß Ihr's kaum gewahren sollt.
Bald sollt Ihr genesen Sein,
La Marioneta,
Bald geheilt von aller Pein,
La Marion.«

「誰が君の可愛い足にけがをさせたんだい?
 ラ・マリオネータ
 雪のように白い君のかかとに
 ラ・マリオン!」

何がわたしを傷つけたのか
一つも隠さずに話すわね
わたしは夜バラの茂みに行ったの
そして枝から一輪のバラを手折り
歩くうちにトゲを踏んでしまったのよ
ラ・マリオネータ
それはわたしの心にまで突き刺さったわ
ラ・マリオン

わたしの苦しみをすべて話しましょう
あなたは友達よ、うそはつかないわ
わたしは百合を摘もうと
ひとりで森に行ったの
そこで鋭いとげがわたしを刺したのよ
ラ・マリオネータ
それは甘い愛の言葉だったの
ラ・マリオン

誠意を持って話しましょう
わたしの病のことを、わたしの傷のことを
きれいなカーネーションの植えてある
あの庭に今日行ったの
そこで木のとげがわたしを傷つけたのよ
ラ・マリオネータ
その血はまだ止まらずに流れ続けているわ
ラ・マリオン

「お望みならば美しいご婦人よ
 この僕は腕のいい外科医だから
 君の傷の痛みを穏やかに和らげ
 ほとんどわからないぐらいにしてあげよう
 まもなく君は回復するだろう
 ラ・マリオネータ
 まもなく君の痛みはすっかり治るさ
 ラ・マリオン、ラ・マリオン、ラ・マリオン」


急速なテンポの軽快な曲。これもジプシー娘の踊り子が主人公でしょう。本当のことを話すと言いながら、女の話の内容は節ごとにくるくる変わる。第4節の前に突然休止があり、男のせりふの初めの4行のみ急激にテンポを落としてもったいぶって語られ、そのあとは元のテンポに戻ります。さてこのやりとり、「とげ」を刺したのはこの男で、娘の方からの愛の告白なのでしょうか、それともインチキ女とインチキ男の化かし合いなのでしょうか・・・?
「ラ・マリオネータ、ラ・マリオン」という掛け声に何らかの意味やいわくがあるのかどうかはちょっとわかりませんでした。スペイン語の辞書で調べましたが”Marioneta”は正にマリオネット、操り人形の意。”Marion”は何とチョウザメ、キャビアを生む魚のことでした。「操り人形! チョウザメ!」ではあまりに変なのでそのままにしましたが、単なる語呂合わせでしょうか。なお、グラモフォン盤全集のLP日本初出盤の黒田恭一氏の解説によると、この詩の原詩はリムニッシュというプロヴァンス地方の方言で書かれているそうです。

ヴォルフ協会のSPにこの曲は含まれていませんが、古いものでは往年の名歌手ロッテ・レーマンが戦前に録音しています。シュヴァルツコップは58年のライブ録音と、全集のものがありいずれも大変鮮やかです。ライブの方は超絶的なテンポで疾走して圧巻。そして全集の方はもうすこし落ち着いていますが、終結部の最後の「ラ・マリオン」を笑い声で歌うという大技(荒業?)を見せていて驚かされます。彼女の最後のリサイタル盤に入っていたメーリケ歌曲『恋は飽くことを知らぬもの』でもやっていましたが得意技だったのでしょうか。さすがの芸達者、とても自然で大変魅力的です。もうひとつの全集のオッターは、快速テンポで颯爽と歌う中に細やかな表情をつけて、シュヴァルツコップに劣らない抜群のうまさを見せますが、こちらは最後の「ラ・マリオン」をソットヴォーチェにして口説くように歌っています。これも大変心憎い。ここが男のセリフであることを考えたらオッターに分がありますが、シュヴァルツコップの荒業のインパクトも捨てがたく、両雄(雌?)相譲らずといった感じです。おそらく後発のオッターは大先輩の録音を聴いて対抗策を編み出したのではないでしょうか?
他にドボジーと日本のソプラノ釜洞祐子さんのディスクもありますが、どちらもストレートに歌ってなかなか楽しく聴かせてくれました。

( 2003.2.21 甲斐貴也 )


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