The Sleeper |
ザ・スリーパー |
At midnight,in the month of June, I stand beneath the mystic moon. An opiate vapor,dewy,dim, Exhales from out her golden rim, And softly,softly wafting, Steals drowsily and musically Into the universal valley. The lady sleeps! My love,she sleeps! Oh,may her sleep, which is enduring, So be deep,be deep! |
6月のとある真夜中に 私は立っていた 怪しげな月の下 麻薬のような空気が湿っぽく、陰鬱に 彼女の金色の周縁から立ちのぼり そっと そっと漂って もの憂げに、そして調べのように 谷間へと注ぎ込む 彼女は眠る! 私の恋人、彼女は眠る ああ、彼女の眠り 永遠に続くものよ 深く、深くあれ! |
私は別にクラムの曲の愛好者でもなんでもありませんが、この曲、私がこれまでの人生で聴いた中で「一番怖い曲」なもんで、この暑いさなか、納涼の意味も込めてご紹介します。詩がポーというだけで期待はいやが応にもふくらみます。
冒頭の不吉なピアノの不協和音の連打からゾクゾクっと来ます。音が消え入らないうちにソプラノが12音時代のシェーンベルクのような無表情の旋律を歌い初め、そして歌の間には無気味なつぶやきが.... ああっ、ピアノが特殊奏法で琵琶のような音を出しました。ここまでやるかぁ。まさに真夏の怪談話にふさわしい珠玉の一遍でした。
Nonesuchから、”Songs of America”というタイトルで出ている、フォスターやアイブズ、更にはカーターやケージまでごたまぜに収録されている面白いCDで、この曲が唐突に出て来た時はびっくりしましたが。(9 79178-2)
演奏はデガエタニ(Ms)・カリシュ(Pf)、なかなか良いです。そういえば同じレーベルにこの人、アイブズの歌曲集も入れていましたね。
この詩は、ポーの長い詩を、作曲者が選んで短く纏めたものです。死んだ恋人を偲んで書かれたものですが、「蛆虫も彼女の回りを這うが良い」とかかなりエグいフレーズが原詩にはところどころ有って強烈でした。
1998.07.27 (2000.08.25改訂)
1節目の大部分はポーの原詩のままで、第2節はほとんどクラムのオリジナルなようです。著作権的にはクラムの二次創作と見なせそうですが、ここではポーの作品ということで英語の歌詞も載せることにします。問題あればお知らせください。削除致します。
( 2000.08.25 藤井宏行 )