Blindes Schauen,dunkle Leuchte Spanisches Liederbuch(Weltliche Lieder) |
世俗歌曲第9曲『目を閉じても見えるもの』 スペイン歌曲集_世俗歌曲集 |
Blindes Schauen,dunkle Leuchte, Ruhm voll Weh,erstorb'nes Leben, Unheil,das ein Heil mir däuchte, Freud'ges Weinen,Lust voll Beben, Süße Galle,durst'ge Feuchte, Krieg im Frieden allerwegen, Liebe,falsch versprachst du Segen, Da dein Fluch den Schlaf mir scheuchte. |
目を閉じても見えるもの、真っ暗な明かり 嘆きに満ちた名誉、死んでいる命 幸福に見えて実は災い 喜ばしい悲しみ、おぞましい快さ 甘美な苦汁、渇いた潤い いつも平和でいつも戦い 愛め、おまえは幸せを約束するふりをして 呪いで僕から眠りを奪ってしまった |
ヴォルフ歌曲の名伴奏者にして、ヴォルフの評伝も著している(『フーゴー・ヴォルフ評伝〜怒れるロマン主義者』音楽之友社)エリック・ヴェルバは同著でこの作品を曲集の中では価値の低い作品を紹介する中に挙げ、「詩の言葉からして既に耐え難い」の一言で片付けています。確かにあまり感銘深い詩とは思えず、訳詩に日本語としての流れを作るのも一苦労でした。
最初に詩だけ読んで、一連の情けない男の歌に通じる滑稽味を予想したのですがそれはほとんど全くなく、『わたしは海を渡り』に似た、短いながら奔流のような悲壮感のある曲でした。演奏は地味な男声用歌曲の例にもれずフィッシャー=ディースカウの二種とベーアしか聴くことが出来ませんでした。この作品では切れ味鋭く愛の苦悩を描くF=D氏の冴えがなんと言っても聴き物です。発想表示は「落ち着いて、しかし情熱的に」と相反したことが書いてありますが、F=D氏は後者、ベーアは前者よりの歌唱といった印象です。
( 2003.3.28 甲斐貴也 )