Oh fair enough are sky and plain BREDON HILL AND OTHER SONGS |
おお とても美しい 空も野原も ブリードンの丘とその他の歌曲 |
Oh fair enough are sky and plain, But I know fairer far: Those are as beautiful again That in the water are; The pools and rivers wash so clean The trees and clouds and air, The like on earth was never seen, And oh that I were there. These are the thoughts I often think As I stand gazing down In act upon the cressy brink To strip and dive and drown; But in the golden sanded brooks And azure meres I spy A silly lad that longs and looks And wishes he were I. |
おお とても美しい 空も野原も だけどぼくは知っている もっとずっと美しいものを: それらは倍も美しいんだ 水に映った姿が 池や川はとてもきれいに洗ってくれるから 木々を 雲を 大気を これほどのものは地上では見られない おお ぼくもそこに行ってみたいものだ そんなことをぼくはしょっちゅう考える 立って覗き込む時には 実際にクレソンの水辺で 裸になって飛び込み おぼれ死ぬ時に だけど 黄金の砂地の小川や 真っ青な沼の中にぼくがこっそり見るのは 馬鹿な若者だ 憧れて見上げている ぼくのようになりたいと |
「シュロップシャーの若者」の20番目の詩、なんとも不思議な情景です。水に映る、この世よりもずっと美しい鏡像の世界、そこに主人公の「ぼく」は飛び込んで行ってしまったのでしょうか。そしてその飛び込んだ後を見つめているもう一人の若者(鏡の反対側の水の底から見ていると、向こうでは覗き込んでいる姿が見上げているように見えますね。
別に自殺の勧めという訳でもないでしょうが、美しくないこの世にいるよりは美しい世界に旅立ちたいという純粋な気持ちの吐露です。もっともそれが愚かしいことだという理性はしっかりと持っている訳ですが。
バターワースの書いたメロディはあの世から響く幻影でしょうか。途方もなく美しく、純粋で、そして衝撃的です。虚弱な感じのテノールが歌うと実に見事にはまった音楽になります。この曲はあまりドラマテッィクにしない方が良い感じです。
( 2016.03.13 藤井宏行 )