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Geliebter,wo zaudert   Op.33-13  
  Die schöne Magelone
愛するお方 どこでぐずぐずしているの  
     美しきマゲローネ

詩: ティーク (Johann Ludwig Tieck,1773-1853) ドイツ
    Liebesgeschichte der schönen Magelone und des Grafen Peter von Provence 14 Geliebter,wo zaudert

曲: ブラームス (Johannes Brahms,1833-1897) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Geliebter,wo zaudert
Dein irrender Fuß?
Die Nachtigall plaudert
Von Sehnsucht und Kuß.

Es flüstern die Bäume
Im goldenen Schein,
Es schlüpfen mir Träume
Zum Fenster hinein.

Ach! kennst du das Schmachten
Der klopfenden Brust?
Dies Sinnen und Trachten
Voll Qual und voll Lust?

Beflügle die Eile
Und rette mich dir,
Bei nächtlicher Weile
Entfliehn wir von hier.

Die Segel,sie schwellen,
Die Furcht ist nur Tand:
Dort,jenseit den Wellen
Ist väterlich Land.

Die Heimat entfliehet,
So fahre sie hin!
Die Liebe,sie ziehet
Gewaltig den Sinn.

Horch! wollüstig klingen
Die Wellen im Meer,
Sie hüpfen und springen
Mutwillig einher,

Und sollten sie klagen?
Sie rufen nach dir!
Sie wissen,sie tragen
Die Liebe von hier.

愛するお方 どこでぐずぐずしているの
あなたのさまよう足は?
ナイチンゲールが語っています
憧れとくちづけのことを

木々もささやいています
金色の輝きのうちに
私のもとには夢が忍び込みます
窓をすり抜けて

ああ!あなたはご存じですか この思いを
脈打つこの胸の?
この気持ちと望みは
苦しみも一杯 喜びも一杯です

翼を広げ 急いで
私を救いに来て
夜の間に
私たちはここから逃げましょう

帆はふくらんでいます
不安などささいなこと
あの波の向こうには
父なる国があるのです

故郷が遠ざかっていきます
そうなるがいいわ
愛が引き寄せるのです
力強く この心を

聞いて!なまめかしく響く
海の中の波が
波は飛び跳ねて
陽気に打ち寄せます

波は嘆いているの?
いえ あなたを呼んでいるのです!
知っているのです 自分たちが運んで行くことを
愛をここから


第14章「異教徒スリマがかの騎士を愛したこと(Die Heidin Sulima liebt den Ritter)」
異郷の地に囚われたまま二年が過ぎようとしておりました。スルタンからはかわいがられ、宮廷の誰もが羨むほどの自由を与えられていたにも関わらず、故郷のことや恋するマゲローネのことが忘れられないペーターの心は晴れません。そんな中、スルタンの娘スリマはそんな愁いに満ちたペーターに激しい恋心を抱きます。信頼できる女奴隷の手引きでペーターを秘密の部屋に連れ込むスリマ、ペーターは彼女の美しさに心乱れますが、マゲローネへの想いの方がずっと勝っておりました。
とは言いながら故郷に帰りたい思いの募るペーターは彼女に会うことを重ね、ついにスリマはペーターに駆け落ちしましょうと話を持ち掛けます。逃げ出す手立てがあれば故郷に帰れる、どうせマゲローネは死んでしまっているのだろうから、と自分を納得させるペーター。その駆け落ちの申し出に応じます。
いよいよ駆け落ちしようという晩、夕暮れにペーターがうたた寝しているとマゲローネが夢に現れます。その姿にわれに返るペーター、純真な娘を騙してまで故郷に帰ろうとしていたゲスな自分が恥ずかしくなり、思わずそこにあった小舟に飛び乗って漕ぎ出します。穏やかな夏の夜の海。そこへ駆け落ちの合図でしょうか。ツィターの音に乗って愛らしいスリマの歌声が響いてくるのでした。
その歌は彼の不実と優柔不断をなじっているかのようにペーターには聞こえ、思わずオールを漕ぐ手にも力が入ります。どんどん沖に漕ぎ出して、やがてスリマの歌声も聞こえなくなったのでした。

ツィターの軽快な響きを模しているからでしょうか。歌声も驚くほど軽やかで楽しげです。まるでこれから二人で旅立つことが嬉しくてしょうがないような感じの。
スルタンの娘が歌うという設定ですので、この曲も11曲目同様に女性歌手をここだけワンポイントで起用して歌わせるケースもしばしばあります。

( 2016.03.13 藤井宏行 )


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