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Johanna Sebus   D 728  
 
ヨハンナ・ゼーブス  
    

詩: ゲーテ (Johann Wolfgang von Goethe,1749-1832) ドイツ
      Johanna Sebus(1809)

曲: シューベルト (Franz Peter Schubert,1797-1828) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


 Der Damm zerreißt,das Feld erbraust,
 Die Fluten spülen,die Fläche saust.
»Ich trage dich,Mutter,durch die Flut,
Noch ist sie nicht hoch,ich wate gut.« --
»Auch uns bedenke,bedrängt wie wir sind,
Die Hausgenossin,drei arme Kind'!
Die schwache Frau!... Sie elit davon!« --
Sie trägt die Mutter durchs Wasser schon.
»Zum Bühle da rettet euch! harret derweil;
Gleich kehr ich zurück,uns allen ist Heil.
Zum Bühl ist's noch trocken und wenige Schritt';
Doch nehmt auch mir meine Ziege mit!«

 Der Damm zerschmilzt,das Feld erbraust,
 Die Fluten wühlen,die Fläche saust.
Sie setzt die Mutter auf sichres Land,
Schön Suschen,gleich wieder zur Flut gewandt.

»Wohin? Wohin? Die Breite schwoll,
Des Wassers ist hüben und drüben voll.
Verwegen ins Tiefe willst du hinein !« --
»Sie sollen und müssen gerettet sein!«

 堤防は割れ 野は轟いて
 洪水が洗い 平野に押し寄せる
「私が背負って行くわ お母さん 水の中を
まだ水位は高くない 十分歩いて行けるわ」 -
「私たちも忘れないで 同じように急いでる
同居人の女と 三人の可哀想な子たちが!」
このか弱い女を...あなた置いて行くの!」 -
彼女はもう母を水の向こうに運んでいた
「丘の方なら安全よ!あそこで待っててね
私は戻って みんなを助けてくるわ
丘にはまだ水が来てないし すぐ近くだから
でも私のヤギも連れて行ってね!」

 堤防は崩れ 野は轟いて
 洪水が渦巻き 平野に押し寄せる
母親を安全なところに座らせると
美しいズースヒェンはすぐに洪水の方へと戻って行く

「どこへ?どこへ行くの?水嵩は増して
ここもあそこも水があふれている
深みに入って行こうなんて無茶ですよ!」
「あの人たちを助けなくちゃならないのよ!」


迫力のあるバラード、非常に魅力的な曲なのですがなぜか未完に終わっており、唐突に音楽は途切れてしまいます。もともとは1809年に実際にあった事件をもとにしているのだそうで、ゲーテが親しいツェルターにカンタータの作曲を依頼し、1811年に初演されて大成功をおさめたのだそうです。全部の詩やこの物語の背景などはそのツェルターの項で取り上げておりますのでご興味おありの方はそちらをご覧ください。シューベルトのものは1821年に書かれたようですが出版は1895年、未完ということもあって歌曲全集のようなものでないとなかなか取り上げられることはありませんが、テノールのイアン・ボストリッジが録音したものが聴けます。かなりの熱唱でインパクトがあり、この曲が未完で終わったことが惜しまれてなりません。

( 2016.03.11 藤井宏行 )


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