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Nun wandre,Maria    
  Spanisches Liederbuch(Geistriche Lieder)
聖歌曲第3番 「さあ歩きましょう、マリア(聖ヨセフの歌)」  
     スペイン歌曲集_聖歌曲集

詩: ハイゼ (Paul Heyse,1830-1914) ドイツ
    Spanisches Liederbuch - 1. Geistliche Lieder (スペインの歌の本 1.聖歌曲) 3 Nun wandre,Maria 原詩:オカーニャ Francisco de Ocaña,

曲: ヴォルフ (Hugo Wolf,1860-1903) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Nun wandre,Maria,nun wandre nur fort.
Schon krähen die Hähne,und nah ist der Ort.

Nun wandre,Geliebte,du Kleinod mein,
Und balde wir werden in Bethlehem sein.
Dann ruhest du fein und schlummerst dort.
Schon krähen die Hähne und nah ist der Ort.

Wohl seh ich,Herrin,die Kraft dir schwinden;
Kann deine Schmerzen,ach,kaum verwinden.
Getrost! Wohl finden wir Herberg dort.
Schon krähen die Hähne und nah ist der Ort.

Wär erst bestanden dein Stündlein,Marie,
Die gute Botschaft,gut lohnt ich sie.
Das Eselein hie gäb ich drum fort!
Schon krähen die Hähne und nah ist der Ort.

さあ歩きましょう、マリア、歩き続けましょう
もう鶏が鳴いている、目指す町は間近です

さあ歩きましょう、いとしい人、わたしの宝物よ
もうすぐベツレヘムに着くのです
そうすればゆっくり休み、ぐっすり眠れるのです
もう鶏が鳴いている、目指す町は間近です

妻よ、あなたは疲れ今にも力尽きそうだ
ああ、あなたの苦しみは見るに耐えない
だが元気を出して! そこには宿もあるでしょう
もう鶏が鳴いている、目指す町は間近です

もう少しの辛抱です、マリアよ
そうすればよい知らせがあるでしょう
宿のお礼なら、このロバを手放せばいいのだから!
もう鶏が鳴いている、行きましょう! 目指す町は間近です

皇帝アウグストゥスの勅令による住民登録のため、住んでいたガリラヤの町ナザレから出身地であるユダヤの町ベツレヘムに向かう大工ヨゼフと許婚で神の子を身ごもった処女マリア(新約聖書のルカによる福音書第2章1〜5)。

疲れ切った身重のマリアの足取りはかなり重いようです。ゆっくりとした歩行のリズムで切々と諭すヨゼフの励ましで、二人は次第に町に近づき曲調はほのかに明るくなってゆきます。最後はだんだん音量を落として遠ざかってゆき、ベツレヘムの町に入ってゆくふたりの後ろ姿を見送るかのようです。

聖書に詳しい友人に聞いた話では、夢に現れた天使の命により、神の子の母となるマリアに忠実に仕えるヨセフにはとかく存在感がなく、ヨセフ自身の意思を示すような言葉は 出てこないそうです。また、最後の節で出てくる労苦の報いは、単に旅の苦労が宿の休息で報われるということではなく、苦難の末に神の子を産み神の母となる栄誉を担うことが示唆されているのでは、とのことでした。この詩の作者が 聖書に無いヨセフの言葉を創作したこの詩全体にこめた意図も、おそらくそこにあるのだろうと思います。
そんなことも知らず、当初は普通の夫が妻を励ますような調子に訳そうとしていたのですが、聖歌曲を訳するのには勉強不足が痛感されました。

録音はあまり多くないようで、古くは戦前のヴォルフ協会のゲルハルト(メゾ)によるSP録音(EMI)、往年のテノール、ペーター・アンダースの戦中の録音(ベルリン・クラシックス)、そしてフィッシャー=ディースカウの選集(EMI)と全集(DG)に含まれる二種、新しい全集のベーア。他にレーガーによるオルガン伴奏編曲版の録音も。巧者のフィッシャー=ディースカウ、威厳あるゲルハルト、真摯なベーアももちろん良いですが、足を引きずるような遅いテンポでしみじみと歌うアンダースはなかなか印象的でした。

( 2003.1.4 甲斐貴也 )


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