Der Rattenfänger Lieder nach Gedichten von J W von Goethe |
ねずみ捕り男 ゲーテ歌曲集 |
Ich bin der wohlbekannte Sänger, Der vielgereiste Rattenfänger, Den diese altberühmte Stadt Gewiß besonders nötig hat. Und wären's Ratten noch so viele, Und wären Wiesel mit im Spiele, Von allen säubr' ich diesen Ort, Sie müssen miteinander fort. Dann ist der gut gelaunte Sänger Mitunter auch ein Kinderfänger, Der selbst die wildesten bezwingt, Wenn er die goldnen Märchen singt. Und wären Knaben noch so trutzig, Und wären Mädchen noch so stutzig, In meine Saiten greif ich ein, Sie müssen alle hinterdrein. Dann ist der vielgewandte Sänger Gelegentlich ein Mädchenfänger; In keinem Städtchen langt er an, Wo er's nicht mancher angetan. Und wären Mädchen noch so blöde, Und wären Weiber noch so spröde, Doch allen wird so liebebang Bei Zaubersaiten und Gesang. |
わたしゃ名高き歌うたい あちこち旅するネズミさらいでござい 古くより知られたるこの町も きっと御用がこざいましょう いかにネズミが多かろうと いかにイタチが目立ってようと みなこの場より片づけて見せましょう やつらはみんなどこかへと消える さてさてこのご機嫌な歌うたい 時には子供さらいにもなりまする いかなる腕白どもも退治いたしましょう 金色のメルヘン歌いさえすりゃ いかに男の子どもが聞き分けがなかろうと いかに女の子どもが用心深かろうと わたしが弦を掻き鳴らせば みんなあとをついてくる さてさてこの熟練の歌うたい 時には娘っ子さらいにもなりましょう どんな町に来ようとも 大勢をとりこにせずにはいられない いかに娘たちが恥ずかしがりだろうと いかに女たちがお高くとまってようと みな恋の病にかかりましょう 魔法の弦とこの歌で |
ゲーテのこの有名なバラードはハーメルンの笛吹き男伝説に基づきますが、伝説のねずみ捕り男は笛を吹いていたはずが、ゲーテでは弦楽器(おそらく竪琴)を持っています。あのどちらかというと陰惨なお話に対して、こちらはとてもユーモラスで陽気な男、しかしどことなくキレたら怖そうな雰囲気を醸し出しています。この詩にはシューベルトもメロディをつけていて(D255)、素朴な民謡風の曲が楽しいですが、ヴォルフの作品はこれとは対照的にこの男の異常性を際立たせているかのようです。前奏のピアノの高音のきらめきから鮮烈ですが、早口でまくしたてるその歌声は何とも言えない危うさを醸し出します。こういう作品だとシュライアーが歌ったものが独壇場でしょうか。彼の歌ったゲーテ歌曲集(Eurodisc)、とろける抒情からこのような狂気まで引き出しの広さがとても魅力的です。
( 2015.10.17 藤井宏行 )