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Verzweiflung   Op.33-10  
  Die schöne Magelone
絶望  
     美しきマゲローネ

詩: ティーク (Johann Ludwig Tieck,1773-1853) ドイツ
    Liebesgeschichte der schönen Magelone und des Grafen Peter von Provence 11 So tönet denn,schäumende Wellen

曲: ブラームス (Johannes Brahms,1833-1897) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


So tönet denn,schäumende Wellen,
Und windet euch rund um mich her!
Mag Unglück doch laut um mich bellen,
Erbost sein das grausame Meer!

Ich lache den stürmenden Wettern,
Verachte den Zorngrimm der Flut;
O,mögen mich Felsen zerschmettern!
Denn nimmer wird es gut.

Nicht klag' ich,und mag ich nun scheitern,
Im wäßrigen Tiefen vergehn!
Mein Blick wird sich nie mehr erheitern,
Den Stern meiner Liebe zu sehn.

So wälzt euch bergab mit Gewittern,
Und raset,ihr Stürme,mich an,
Daß Felsen an Felsen zersplittern!
Ich bin ein verlorener Mann.

ならば鳴り響け 泡立つ波よ
そして取り囲むがいい 私のまわりを!
不運が私に激しく咆えかけようと構わぬ
怒るがいい 残忍な海よ!

笑い飛ばしてやるぞ 嵐の空など
軽蔑してやる 潮の怒りも
おお 岩が私を粉々に砕いてしまえばいい!
もう何も良くなりようがないのだから

嘆きはせぬ たとえ難破して
水底に滅びようとも!
わが目はもう決して輝くまい
わが愛する星を見ることで

ならばうねりのしかかれ 雷雨と共に
襲って来い 嵐よ 私に向かって
岩が岩の上で砕けるほどに
私は破滅した男なのだ

第11章「いかにしてペーターは美しきマゲローネを置き去りにしたのか(Wie Peter die schöne Magelone verließ)」
ペーターは眠ることなくマゲローネを見守っておりました。彼女がちょっと苦しげな息遣いをしたので、服の胸のところを少しゆるめてやりますと白い胸元が現れてウブなペーターは思わずくらくらしながら見とれます。その胸の谷間に何か赤い袋のようなものを見つけ、それが何か知りたくなったペーターはその袋を取り出して広げてみますと、それはペーターが彼女に与えた3つの指輪でした。嬉しくなったペーターはその袋を自分の脇の草の上に置きますと、あろうことか一羽のカラスが襲ってきてその袋を持って飛び去って行きます。
内緒で彼女の胸元から取り出した手前、ペーターはカラスから取り返そうと追いかけて行きます。ようやく海岸まで追い詰めて石つぶてを投げつけると、カラスは袋をあきらめて放しますが、それは海に落ちてしまいました。すっかりパニック状態のペーターはその袋を取ろうと、岸辺に捨ててあったボロ舟に乗り込み海に出ます。そこへ折悪しく突風が吹き付け、舟は沖へ沖へと流されて行き、もう岸辺に戻ることはできません。ヤケになってペーターはこんな歌を歌うのでした。

個々の曲のタイトルのないこの歌曲集にあって、この歌のタイトル「絶望」はブラームス自身がつけたもののようです。前曲の安らぎが一変して激しい怒りと絶望の音楽。歌手も力一杯に思いをぶつけます。

( 2016.01.31 藤井宏行 )


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