In the hush of the night |
夜の静けさの中で |
In the hush of the night,by the waves of the sea, I am looking and waiting and longing for thee; And I stretch out my arms to the night,to the star, But a gulf is between us,the light is so far! Oh love of my life,in what land may'st thou be? I am looking and waiting and longing for thee! In the hush of the night,by the foam of the sea, I hear thee,I see thee,thou comest to me, With thine eyes shining through me,like stars in the night, And I lie on thy breast in a storm of delight. O God! 'tis a dream! 'tis a wraith from the sea! Thou art gone! thou art dead! thou art parted from me! In the hush of the night,by the desolate sea, I am weeping and kneeling and praying for thee, And thy sprit comes back with the passion of yore, And the gulf shall divide us,my darling,no more! O love of the past! O love yet to be! I have found thee at last! I am coming to thee! |
夜の静けさの中 海の波の傍らで 私は見て 待ち望み 焦がれているのです あなたを そして私は腕を伸ばします 夜に あの星に けれど深淵が私たちの間にはあって あの光はあまりに遠い! 私の人生の愛よ おおいかなる地にいらっしゃるのですか? 私は見て 待ち望み 焦がれているのです あなたを! 夜の静けさの中 海の泡立ちの傍らで 私は聞き 見るのです あなたがやってくるのを その目を私に向かって輝かせ まるで夜の星のように そして私はあなたの胸の上に横たわるのです 歓喜の嵐のうちに 神よ! それは夢です! 海から来た亡霊なのです! あなたは行ってしまった!死んでしまった!私から去って行った! 夜の静けさの中 荒涼とした海の傍らで 私は泣き ひざまずいて祈ります あなたのために すると あなたの魂は戻ってくるのです 昔の情熱のままに 私たちを分け隔つものは 最愛の人よ もうないのです! おお過ぎ去った愛よ! おおこれからの愛よ! 私はあなたをやっと見つけました! 私はあなたのもとに行きます! |
トスティはイギリス王室の音楽教師としても活躍しましたし、イギリスに縁が深かったようで結構な数の英語の詩による歌曲を書いています。イタリアの歌に英語の詩がただ乗っているだけのようなものから、かなり本格的な英国歌曲っぽくなっているようなものまで多彩な作品ですので探訪してみるととても面白いのですが、トスティを歌うような人たちはあまり英語の歌は得意そうではないので知られざる歌曲ばかりとなってしまっています。そんな中、カナダのテナー、ベン・ヘップナーが入れたトスティ歌曲集では英語圏出身者の強みを生かして4曲、英語の歌を入れてくれていて大変貴重です。この歌の作詞はフレデリック・ウエザリー、「ダニー・ボーイ」の作詞など、当時の流行歌の作詞では大活躍していた人です。
そんな人の詩につけたこのトスティの曲、メロディはけっこうイタリア歌曲っぽいですが、詩は有節歌曲っぽいつくりになっているので同じメロディを3回繰り返すかと思いきや、ドラマの展開に合わせて暗く沈んでいた前半から後半の明るく輝かしいクライマックスへと次第に盛り上げて行くというスタイルを取っていて、けっこうヘビーな歌となりました。ワーグナー歌いのヘップナーには打ってつけのドラマティックな歌と言えましょう。
( 2016.01.18 藤井宏行 )