Orpheus with his lute Op.32-1 Two Shakespeare Songs |
オルフェウスがリュートをとれば 2つのシェイクスピアの歌 |
Orpheus with his lute made trees, And the mountain-tops that freeze, Bow themselves,when he did sing: To his music,plants and flowers Ever sprung; as sun and showers There had made a lasting spring. Everything that heard him play, Even the billows of the sea, Hung their heads,and then lay by. In sweet music is such art: Killing care and grief of heart Fall asleep,or,hearing,die. |
オルフェウスがリュートをとれば 木々や 凍り付く山の頂は 頭を垂れる 彼が歌った時には 彼の調べに 草や花も 常に萌え出でる 太陽や雨が そこを変わらぬ春に変えるので あらゆるものが 彼の演奏を聴くと たとえ海の荒波でさえも その頭を垂れて引き下がる その甘き音楽のうちにはかような技がある 心の悩みや悲しみを静める 眠りにつくか あるいは聞きつつ死すれば |
クィルターのシェイクスピアソング 作品番号つきのものは全部で4つあり、この作品32が最後です。面白いのは第1集(Op.6)が3曲、第2集(Op.23)が5曲、第3集(Op.30)が4曲、そしてこの第4集が2曲と全部曲数が異なることです(クィルターが狙ったのかどうかはともかくとして)。しかしさすがに第4集ともなりますとメジャーどころは出尽くしてかなりシェイクスピアの戯曲でもかなりマイナーなところになってしまうからでしょうか、初めの3つのセットに比べると取り上げられる頻度が劇的に下がってしまっているのがこの第4集の寂しいところです。決して聴き劣りする2曲ではないのですが。
第1曲目は「ヘンリー8世」より。第3幕第1場、不幸な王妃キャサリンを慰めようとお付きの楽師たちが歌うもの。王宮の音楽らしく典雅で優美な歌で、ハイテナーの声でささやかれると思わず痺れてしまいそうです。
( 2016.01.17 藤井宏行 )