Pesnja Selima 20 romansa |
セリムの歌 20の歌 |
Mesjats plyvet,i tih i spokoen, A junosha-voin na bitvu idet. Ruzhe zarjazhaet dzhigit, A deva emu govorit: “Moj milyj,smelee vverjajsja ty roku, Molisja vostoku,bud’ veren proroku, Ljubvi bud’ vernej. Lubvi izmenivshij izmenoj krovavoj, Vraga ne srazivshij,pogibnet bez slavy; Dozhdi ego ran ne obmojut, Zveri kostej ne zarojut!” Mesjats plyvet,i tih i spokoen, A junosha-voin na bitvu idet. A junosha-voin na bitvu idet. |
月が浮かんでいる、静かに穏やかに 若い兵士が今、戦いに出ようとしている ライフルに弾をこめているとき 乙女が彼に話しかけた 「いとしい人。運命を信じて 東に向かって祈り、予言に忠実に そしてあなたの愛に忠実であってください 愛を裏切った人は血の報いを受け 敵を倒し去ることはできないし、栄光の勝利もないのです その傷は雨でも決して洗い流されないし その骨はけもの達が決して土に還さないのです」 月が浮かんでいる、静かに穏やかに 若い兵士が今、戦いに出ようとしている 若い兵士が今、戦いに出ようとしている |
有名なロシア民謡(近代ポピュラー歌曲?)「ともしび」を思わせるような「雄々しきますらお、出でていく」歌ですが、詩は27歳の若さで決闘に倒れた熱血詩人レールモントフのものですのでずっと古く19世紀はじめ。
レールモントフは軍人として、当時のロシアの辺境の地、コーカサス(チェチェン共和国のあたり)に何度か赴き、賊の乱を鎮圧したりしていますので、この戦場に向かう若い兵士というのも非常に実感のこもったものだと思います。
曲は詩人よりおよそ一世代あとのバラキレフです。おそらく彼の代表的な歌曲と言っても良いですがそれでも録音はあまりなく、私が聴いたことがあるのもバスのクリストフのバラキレフ歌曲集くらい、もっと新しいところではボロディナのメゾの録音があるようですけれども未聴です。決然としたリズムと訥々とした旋律はとても印象的で、代表作というのも頷ける曲ではあり、クリストフの熱唱もあって忘れがたい作品です。
低音で歌われる作品なのかも知れませんが、私がぜひ聴いてみたいのは、チャイコフスキーのオペラ「エフゲニー・オネーギン」のレンスキーを歌うようなテノールの声です。
そういえばレンスキーもオネーギンとの決闘で若い命をレールモントフ同様に散らす悲劇の人物ですね。
これに限らずバラキレフの歌曲、訥々としたメロディーに何とも言えない味のある作品が多く、もっと聴かれても良いように思いますが。
( 2004.02.05 藤井宏行 )