Cophtisches Lied I Lieder nach Gedichten von J W von Goethe |
コフタの歌T ゲーテ歌曲集 |
Laßet Gelehrte sich zanken und streiten, Streng und bedächtig die Lehrer auch sein! Alle die Weisesten aller der Zeiten Lächeln und winken und stimmen mit ein: Töricht,auf Beßrung der Toren zu harren! Kinder der Klugheit,o habet die Narren Eben zum Narren auch,wie sich's gehört! Merlin der Alte,im leuchtenden Grabe, Wo ich als Jüngling gesprochen ihn habe, Hat mich mit ähnlicher Antwort belehrt: Töricht,auf Beßrung der Toren zu harren! Kinder der Klugheit,o habet die Narren Eben zum Narren auch,wie sich's gehört! Und auf den Höhen der indischen Lüfte Und in den Tiefen ägyptischer Grüfte Hab ich das heilige Wort nur gehört: Töricht,auf Beßrung der Toren zu harren! Kinder der Klugheit,o habet die Narren Eben zum Narren auch,wie sich's gehört! |
学者どもにはさせておけ 口論でも主張でも 謹厳でもっともらしくさせておけ 教師どもにも! あらゆる賢者たちは あらゆる時代に ほほ笑み うなずき 声を揃えて言うのだ 愚かなことだと バカが利口になるのを期待するのは! 知性ある子供らよ バカは扱え バカとして それにふさわしく! かの老マーリンと 光輝く洞窟の中で 俺は若い頃 話をしたことがあるが 俺に同じ答えを返してくれた 愚かなことだと バカが利口になるのを期待するのは! 知性ある子供らよ バカは扱え バカとして それにふさわしく! インドの風吹きすさぶ高原でも エジプトの洞穴の奥深くでも 俺が聞いてきたのはこの聖なる言葉だけだ 愚かなことだと バカが利口になるのを期待するのは! 知性ある子供らよ バカは扱え バカとして それにふさわしく! |
成人の日にふさわしく、若い人たちに贈りたいゲーテの詩です。詩の内容は特に解説しなくても良くお分かりかと思いますが、第2節に出てくるマーリンというのはあのアーサー王の助言者として伝わる、6世紀に活躍したとされるブリテン島の魔術師のことです。
1786〜8年のイタリア旅行の際、ゲーテはシチリアで当時有名だった錬金術などを生業とする山師カリオストロ「自称」伯爵と会い、彼の話を熱心に書き留めました。このコフタの歌もその時にインスピレーションを得て書かれたもののようで、またその前年にフランスで起きた「王妃の首飾り詐欺事件」を題材にして1791年には「大コフタ」という喜劇をこのカリオストロをモデルにして書いています。自然科学者としても立派な業績を残しているゲーテのことですからカリオストロの胡散臭さは見抜いていて、それでも彼には魅力を感じていたといったところでしょうか。
コフタというのは古代オリエントの預言者たちに憑いた不死の霊なのだそうですが、ここでは喜劇でカリオストロに憑依して喋らせている部分にも使われています。また1815〜19年に出版されたゲーテ全集で、作者自身が様々な時期に書かれた雑多な詩を集めた「つどいの歌」というセクションを作っており、この詩もそこに収められていて、ヴォルフも歌曲集を作るにあたりそこから選び出したのでしょう。
メーリケ歌曲集の最後の曲でも感じますが、理解力のない「権威」に対する痛烈な一撃はヴォルフのお得意とするところ。ここでもとても楽しげに軽やかに罵倒しています。間奏のピアノの小気味良い響きがまたお見事。なんとなく胡散臭さを感じさせながら言ってることは真実ですね。
( 2016.01.10 藤井宏行 )