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Frühling übers Jahr    
  Lieder nach Gedichten von J W von Goethe
四季すべて春  
     ゲーテ歌曲集

詩: ゲーテ (Johann Wolfgang von Goethe,1749-1832) ドイツ
      Frühling übers Jahr (1820)

曲: ヴォルフ (Hugo Wolf,1860-1903) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Das Beet,schon lockert
Sich's in die Höh,
Da wanken Glöckchen
So weiß wie Schnee;
Safran entfaltet
Gewalt'ge Gluth,
Smaragden keimt es
Und keimt wie Blut.
Primeln stolzieren
So naseweis,
Schalkhafte Veilchen,
Versteckt mit Fleiß;
Was auch noch alles
Da regt und webt,
Genug,der Frühling,
Er wirkt und lebt.

Doch was im Garten
Am reichsten blüht,
Das ist des Liebchens
Lieblich Gemüth.
Da glühen Blicke
Mir immerfort,
Erregend Liedchen,
Erheiternd Wort.
Ein immer offen,
Ein Blüthenherz,
Im Ernste freundlich
Und rein im Scherz.
Wenn Ros' und Lilie
Der Sommer bringt,
Er doch vergebens
Mit Liebchen ringt.

花畑は もうふくらんで
うずたかく盛り上がっている
揺れる鈴花は
雪のように白く
サフランも解き放つ
力強い輝きを
エメラルド色の緑から萌え出るのだ
血のように真っ赤な芽を
プリムローズがしゃしゃり出ている
とても生意気に
お茶目なスミレは
わざと隠れている
他にもあらゆるものが
生き生きと動いている
十分だ 春が
動き 息づいている

だがこの庭の中で
一番素晴らしい花は
ぼくの恋する人の
美しい心なんだ
その輝く眼差しが
ぼくを見つめると
歌が生まれ出てくる
言葉を力づける
いつも大らかな
花のような心
ひたむきさのうちに親しげで
お茶目な中に純真
バラやユリを
夏がどれほど咲かせようと
無駄なことさ
ぼくの恋人には敵わない

ピアノのきらめくようなスタカートが春の息吹きを生き生きと描写しています。
ヴォルフの音楽の繊細な響きは、他にも美しい春の描写を色々な歌曲でしていますが、ゲーテ歌曲集のこの一曲は、詩の愛らしさと共にストレートに春の喜びを歌って殊のほか鮮烈です。
最初ささやくようにピアノの合間から歌い始めた声が、「今、春が息づいているのだ」のところで喜びを爆発させ、そして第2節ではぐっとしっとりと恋人の美しさを歌う中、ピアノが再び春のいぶきを思い出させてさらりと終わるという実に見事な構成で、春の喜びを
素直に味わうにはうってつけの曲ではないでしょうか。
フィッシャー=ディースカウはここでも見事な歌ですが、ペーター・シュライヤーのテノールによるものもストレートな喜びの爆発という点ではなかなか素晴らしいものがあります(EURODISC)。

( 2001.03.26 藤井宏行 )


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