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Auftrag(Couplet)    
  Gedichte von Eduard Mörike für eine Singstimme und Klavier
頼みごと(戯れ歌)  
     メーリケ歌曲集

詩: メーリケ (Eduard Friedrich Mörike,1804-1875) ドイツ
    Gedichte  Auftrag

曲: ヴォルフ (Hugo Wolf,1860-1903) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


In poetischer Epistel
Ruft ein desperater Wicht:
Lieber Vetter! Vetter Christel!
Warum schreibt Er aber nicht

Weiß Er doch,es lassen Herzen,
Die die Liebe angeweht,
Ganz und gar nicht mit sich scherzen,
Und nun vollends ein Poet!

Denn ich bin von dem Gelichter,
Dem der Kopf beständig voll;
Bin ich auch nur halb ein Dichter,
Bin ich doch zur Hälfte toll.

Amor hat Ihn mir verpflichtet,
Seinen Lohn weiß Er voraus,
Und der Mund,der Ihm berichtet,
Geht dabei auch leer nicht aus.

Pass Er denn zur guten Stunde,
Wenn Sein Schatz durchs Lädchen schaut,
Lock ihr jedes Wort vom Munde,
Das mein Schätzchen ihr vertraut.

Schreib’ Er mit dann von dem Mädchen
Ein halb Dutzend Bogen voll,
Und daneben ein Tractätchen,
Wie ich mich verhalten sol.

韻を踏んだ堅苦しい手紙で
あのどうしようもない奴がまくしたてている:
親愛なる従兄弟殿、わが従兄弟クリステル殿
何ゆえ御返事くださらぬや

おん身御存知なるが如く
恋の風に吹かれし心
戯言のたまう暇あらじ
ましてや詩人にあれば

かく言うわれも絶えず頭に迷妄満ちたる
無頼漢の一人なりや
わが身の半分詩人なれども
残る半身はこれ狂人なり

愛の神はおん身に責務を課するなり
その報酬事前に了解さるるらん
報告為すおのが愛しき人の口
無為におん身を過ぎゆくことなかるまじ

良き頃合を見計らいて
おのが愛しき人鎧戸より出でし時
わが愛人の打ち明けし全てを
その口より聞きたまえかし

かの娘につきわれに書き送られよ
半ダース有余の書面用い給いて
更に論考も請う
我いかに振る舞うべきやと

へっぽこ詩人が、目当ての娘の親友の恋人である従兄弟に、格式ばった手紙で彼女から娘の気持ちを聞きだすよう頼んでいます。しかし一方的に身勝手なことを並べ立てるこの男、返事がもらえないのも仕方なさそうです。第4連3、4行目は多くの訳で、恋人に会えばキスのひとつも出来るじゃないか、の意に解釈されています。ええかげんにしなさい!・・・と言ったところでしょうか。

原詩では冒頭に述べられているように律儀に韻を踏んだ形式に書かれていますが、ドイツ語の韻文を日本語訳で再現するのは不可能です。しかしだからと言って普通の友人同士の手紙風に訳してしまうと、いまひとつこの詩の滑稽さが伝わらないように思います。そこで古めかしい文語風の訳を試みてみました。その思いつきは悪くなかったとは思うのですが、実際に文語訳を試みてみるとその難しさに直面、結局付け焼刃ではどうにもならないと思い知りました。しかし、これがへっぽこ詩人の作であることを思えば、へっぽこな似非文語体が巧まずしてユーモアを醸し出す効果があるのでは・・・と苦しいこじつけをして公開することにしました。あまりに見苦しい誤りなどありましたらご指摘いただければ幸いです。

ヴォルフの作曲は軽快な楽しいもので、文語訳とはいささかミスマッチな感じもあります。女声ではシュヴァルツコップが旨みを見せるものの、やはり男声の曲でしょう。最近ではハイペリオン・レーベルの歌曲全集のゲンツが緩急自在の楽しい歌を聴かせてくれていました。

( 2004.4.8 甲斐貴也 )


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