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Zur Warnung    
  Gedichte von Eduard Mörike für eine Singstimme und Klavier
戒め  
     メーリケ歌曲集

詩: メーリケ (Eduard Friedrich Mörike,1804-1875) ドイツ
    Gedichte  Zur Warnung

曲: ヴォルフ (Hugo Wolf,1860-1903) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Einmal nach einer lustigen Nacht
War ich am Morgen seltsam auf gewacht:
Durst,Wasserscheu,ungleich Geblüt;
Dabei gerührt und weichlich im Gemüt,
Beinah’ poetisch,ja,ich bat die Muse um ein Lied.
Sie,mit verstelltem Pathos,spottet’ mein,
Gab mir den schnöden Bafel ein:
    >>Es schlägt eine Nachtigall
     Am Wasserfall;
     Und ein Vogel ebenfalls,
     Der schreibt sich Wendehals,
     Johann Jakob Wendehals;
     Der tut tanzen
     Bei den Pflanzen
     Ob bemeldten Wasserfalls.<<

So ging es fort;mir wurde immer bänger.
Jetzt sprang ich auf: zum Wein! Der war denn auch mein Retter.
- Merkt’s euch,ihr tränenreichen Sänger,
Im Katzenjammer ruft man keine Götter!

愉快に過ごしたある晩の翌朝
私は奇妙な気分で目を覚ました
喉は渇くが水は受けつけず血液は逆流
しかしなにやら精神は高揚してくる
そう、そこで我がミューズに一曲所望したというわけだ
ところが彼女は私をからかってイカサマの霊感を起し、
愚にもつかない代物を授けてくれた
    「小夜鳴き鳥がさえずっている
     滝の上で
     そしてもう一羽鳥がいる
     首回しと呼ばれる鳥であるところの
     ヨハン・ヤーコプ・首回し氏
     彼は踊る 
     草木の中で
     先ほど述べた滝の傍で・・・」
こんな具合にだらだら続く;私はだんだん気分が悪くなってきた
その時はっと閃いた、そうだ、酒だ! これは効果てき面、たちどころに気分爽快と相成った
・・・そこで感性豊かなる詩人諸君に一言忠告しよう
汝二日酔いで霊感を使うことなかれ!

* )首回し”Wendehals”=わが国では「アリスイ」と呼ばれる鳥

メーリケ歌曲集第49曲。二日酔いの朝に詩作を試みるが愚作を繰り出すばかり気分が悪くなり、迎え酒で解決するという奇妙な詩です。メーリケ歌曲集全53曲の終わり近くには、有名な「あばよ」や「ある結婚式で」など諧謔的な曲が並びますが、これもそのひとつ。面白いと思ったのは、飲酒を否定しているのではなく、二日酔い時には創作するな、とだけ言っていることです。メーリケも相当な酒飲みだったのでしょうね。なお喜多尾氏は最後の節をかなり大胆に意訳し、「二日酔いにはお祈りよりも迎え酒が一番ということを!」としています(ポリドール「ヴォルフ歌曲集」)。
陰鬱なピアノ前奏で始まり、歌は「くぐもったしゃがれ声で」歌いだされます。中間部の愚作の詩の部分は軽快で滑稽な曲想。演奏はこの手の諧謔の得意なフィッシャー=ディースカウに4種のディスクがあります。わたしは中間部の愚作を歌うところであまりはしゃがず、あくまで大真面目にやった方が良いと思うのですが、全集に収められた演奏は万全です。ブダペストでのライブ録音はリヒテルのピアノが聴き物。
雄弁の極みのフィッシャー=ディースカウに比べ、他の歌手たちは真面目過ぎる感がありますが、フィンランドの大バス歌手キム・ボルイがヴォルフのスペシャリスト、エリック・ヴェルバの伴奏で歌ったものは風格で聞かせます。とぼけたユーモアを得意にするホッターの録音があったら聴いてみたいところです。
(2003.2.6 甲斐貴也)

「首回し」には当初和名の「アリスイ」を当てたのですが、その首をぐるぐる回す奇妙な習性が酔った詩人の滑稽さを表現していると考え直して、独名の直訳に改めました。アリスイの画像と解説を画像ギャラリーに掲載しましたのでどうぞご覧下さい。 
演奏はその後発売された女声による全集盤(Arte Nova)のフラウケ・マイ(メゾ・ソプラノ)が抜群の面白さです。まさに「くぐもったしゃがれ声」で呻くように始まり、あざといまでに二日酔い状態を演じた怪演は、繰り返し聴くには向かないものの一聴の価値は十分ありです。

( 2004.10.25 甲斐貴也 )


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