沙羅の木 |
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褐色(かちいろ)の根府川石(ねぶかはいし)に 白き花はたと落ちたり、 ありとしも葉がくれに 見えざりしさらの木の花。 |
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東京都文京区千駄木にあった森鴎外の家の庭にあった夏椿の木のことを歌ったもの(初出は明治39年)で、この邸宅跡が森鴎外の記念室となり、また鴎外33回忌を迎えた昭和29年に子息の森於菟らによってこの詩を刻んだ詩碑が立てられました。字を書いたのは永井荷風なのだそうです。信時の作曲も同じ年ですので恐らくはこの詩碑の建立と関わりがあるのでしょうね。独唱、または二部合唱残念ながら音となって聴けるのは私の知る限りは地元文京区の出している「文京ゆかりの作詞・作曲家2」というCDで岡田京子さんが歌っているもののみのようです。美しくて良いメロディなのでもっと聴かれても良いように思いますが、詩も曲も少々地味に過ぎるかも知れません。
( 2015.12.06 藤井宏行 )