日本のあさあけ |
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一 ひむがしに 茜かがよひ 祖先 あらた代に 今こそ映 見はるかす 小野 香 もろともに 祝 二 あたらしき 朝明 峰々 雲はるか 常若 むらぎもの 心さやけく 澄みとほる 光 とことはに 和 |
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さて、「われらの日本」を書いた1947年からさらに時は下って1952年(昭和27年)。その前年にサンフランシスコ講和条約が締結され、その発効日の4月28日に記念式典を行うにあたり、時の文部大臣の発案によって詞:斎藤茂吉、曲:信時潔に委嘱されて書かれた祝典歌です。茂吉に頼んだからにはこうなることは仕方ないのですが、万葉調のたいへん格調高い詩ではありますけれども、戦後の人間には正直何を言ってるのかさっぱり分からない感がありまして、当時も文部省肝いりで子供たちに歌わせようとしたことに対しかなりの反発があったようです。
まあ内容的にはやってきた朝焼けの美しさに感動しているだけのものではあるのですが、言葉が古いだけに何か旧帝国の価値観を内包しているように誤読されかねない危うさをはらんだ作品でもありますね。この曲をYoutubeで取り上げておられる唯一の方もそちらの価値観に親和性のありそうな感じのチャンネルでの公開でしたし。信時の音楽も格調高く穏やかに歌い上げるものなのでそういう風に聞こえてしまうのも仕方ないのかも知れませんが、できるならばそういう政治性とは無縁なところで味わいたい歌ではあります。
( 2015.12.05 藤井宏行 )