われらの日本 |
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詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
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「海道東征」を取り上げました以上は、バランスを取るためにもこの曲をご紹介致しましょう。残念ながら詞の著作権がまだ存続しておりますので歌詞のご紹介はできませんが、この曲、1947年の日本国憲法施行を記念して書かれた国民歌です。GHQの指導で新憲法を広く国民の間に理解して貰う組織として作られた憲法普及会は、国民歌としてこの曲を詞:土岐善麿、曲:信時潔に委嘱。この年の5月3日の皇居前の式典で350名の合唱によって歌われたと記録にあります。続いて5月8日からはNHKのラジオ歌謡で酒井弘のソロ、東京放送合唱団による演奏が放送されたのだそうです。
作詞の土岐善麿(1895-1980)は国文学者。戦前は新聞記者として活躍していましたが、太平洋戦争間際の昭和15年、自由主義者として非難され新聞社退社を余儀なくされます。戦争中は隠遁生活しながら文学研究にいそしんでいたのだそうで、そんないきさつがこの国民歌の作詞への起用はうってつけといったところでしょうか。格調高い歌詞はさすがですが、ちょっと時代を感じさせるのが現代人には難でしょうか。信時の音楽も平和の喜びを歌う爽やかなものですが、ちょっと歴史に残るには平凡過ぎる感があり、残念ながら忘れ去られてしまう運命にあったようです。SP復刻録音で、柴田睦陸のテナーに日本ビクター合唱団・オーケストラで収録されたものを聴くことができますが、なかなか簡単には耳にするのが難しいかも知れません。Youtubeにはボーカロイドなどでいくつか音になっているものがあり、それで聴くことができますし、歌詞もご覧になれますのでご興味おありの方は「われらの日本」で検索してみてください。ついでと言っては何ですが、ちょうど同じ1947年、憲法普及会は「憲法音頭」というのも委嘱しており、先の柴田盤の裏面にはこれが収録されていたのだそうです。作詞がサトウハチロー、作曲が中山晋平に歌が市丸という黄金メンバー、これもYoutubeで片鱗が聴けて非常に興味深いものがありました。
( 2015.11.30 藤井宏行 )