御船謡 海道東征 |
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その一 御船出ぞ、大御船出、 御伴船挙りさもらへ、 御伴びと挙り仰げや。 揺りとよめ、科戸の風と 声放て、東に向きて、 大御船真梶繁ぬき、 照りわたる御弓の弭、 あな清明け、神にします、 あな眩ゆ、皇子にします。 はろばろや大海原、 涯なしや青水沫、 揺りとよめ大き国民、 大君に、 この神に、 讃へ言、 寿詞申せや。 その二 荒海の、 荒海の潮の八百道の、 八潮道の、 潮の八百会に、ハレヤ、 とどろ坐す速開津姫に、 朝開、朝のみ霧の 遠白に、 末鎮み 鎮まらせ、 み眼すがすがと笑ませとぞ、 きこしめせと申さく み船謡。 その三 -い- ヤァハレ 海原や青海原。 ヤァハレ 青雲やそのそぎ立、 その極み、こをば。 我が海と大君宣らす、 我が空と皇孫領らす。 -ろ- ヤァハレ 潮沫のとどまるかぎり、 船の舳の行く行くきはみ。 ヤァハレ 島かけて、八十嶋かけて、 大海に船満ちつづけて。 見はるかし、大君宣らす、 四方つ海皇孫領らす。 -は- ヤァハレ 国土や、大国土。 ヤァハレ 国の壁そのそぎ立、 その極み、こをば。 我が国と大君宣らす、 我が土と皇孫領らす。 -に- ヤァハレ 青雲のそぎ立つきはみ、 白雲の向伏すかぎり。 ヤァハレ 谷蟆のさわたるきはみ、 馬の爪とどまるかぎり。 見はるかし、大君宣らす、 四方つ海皇孫領らす。 -ほ- ヤ 狭狭の国は広くと、 ヤ 嶮し国平らけくや。 ヤ 遠き国は綱うち掛け、 もそろよと、 もそろと、 国引くと、引き寄すと。 あなおほら、大君宣らす、 あなをかし、目翳しおはす。 善しや、善しや、弥栄。 とどろとどろ、弥栄。 |
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第4章は船の上での情景。ピアノのソロ伴奏に乗せてまずバリトンのソロがしみじみと「その一」を歌います。寿詞(よごと)とありますが、臣下より天皇に対して祝賀の気持ちを述べる口上だそうです。これを受けての「その二」は管弦楽も加わって明るさを増したところで歌われるテノールのソロ。堂々と盛り上がったところで「その三」、船乗りたちの景気の良い船歌が始まります。二人のソロに合唱も加わってなかなかにノリの良いメロディです。時代劇映画の船の上のシーンを思わず思い浮かべてしまいました。
( 2015.11.24 藤井宏行 )