御船出 海道東征 |
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その一 日はのぼる、旗雲の豊の茜に、 いざ御船出でませや、うまし美々津を。 海凪ぎぬ、陽炎の東に立つと、 いざ行かせ、照り美しその海道。 海凪ぎぬ、朝ぼらけ潮もかなひぬ、 艫舳接ぎ、大御船、御船出今ぞ。 その二 あな清明け、神倭磐余彦、その命や、 あな映ゆし、もろもろの皇子たちや、その皇兄 や。 いでませや、おほらかに大御軍、 まだ蒙し、遥けきは鴻荒に属へり。 慶を皇祖かく積みましき、 正しきを年のむた養ひましぬ。 神柄や、幾万、年経りましき、 暉や、かつ重ね、代々坐しましぬ。 和み霊、また和せ、ただに安らと、 荒み霊、まつろはぬいざことむけむ。 大御稜威い照らすと御船出成りぬ、 日の皇子や、御鉾とり、かく起ちましぬ。 その三 日はのぼる、旗雲の照りの茜を、 いざ御船、出でませや、明き日向を。 海凪ぎぬ、満潮のゆたのたゆたに、 いざ行かせ、照り美しその海道。 海凪ぎぬ、朝ぼらけ潮もかなひぬ、 艫舳接ぎ、大御船、御船出今ぞ。 |
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第3章はいよいよ大和へ向かっての船出です。伝説によれば出港した港は日向の国美々津(今の宮崎県日向市美々津)なのだそうで、その地名も織り込まれています。また中間部に出てくる神倭磐余彦(かむやまといはれひこ)はまだ即位する前の神武天皇のこと。彼とその兄弟たちがまだ暗い港に集結している情景でしょうか。
信時の音楽は冒頭、まるで映画音楽のような雄弁な情景描写ですが、歌が入る前にはいつも通りの楷書体の音楽に戻り荘厳な合唱が始まります。晴れやかな船出らしく爽やかでゆったりとした音楽です。
( 2015.11.23 藤井宏行 )