大和思慕 海道東征 |
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大和は国のまほろば、 たたなづく青垣山。 東や国の中央、 とりよろふ青垣山。 美しと誰ぞ隠る、 誰ぞ天降るその磐船。 愛しよ塩土の老翁、 きこえさせその大和を。 大和はも聴美し、 その雲居思遥けし。 美しの大和や、 美しの大和や。 |
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第2章は白秋の詩集「新頌」では女声(独唱竝に合唱)とあり、前の章から一転して清楚に優雅に大和の国の美しさを歌い上げます。ソロが主体ですが一部デュエット、更には女声合唱がほのかに入ってきます。
「大和は国のまほろば」と言えば、古事記にある倭建命の歌とされる「倭は 国のまほろば たたなづく青垣 山隠る 倭しうるはし」から取っています。
これも倭建命が大和の国より関東へと「東征」をし、その帰路に望郷の思いから詠んだ歌でした。
磐船、塩土老翁については、その磐船があるとされる大阪・交野の磐船神社のサイトに分かりやすく由来が紹介されていました。
http://home.s01.itscom.net/sahara/stone/s_kinki/osa_iwafune/iwafune.htm
日本書紀第三によれば、神武天皇(神日本磐余彦尊)にこの塩土老翁が「東に美き地有り。青山四周れり。其の中に亦、天磐船に乗りて飛び降る者有り」と告げたのが(超意訳しますと、東方にも高千穂と同じように、天の船に乗って降り来た者がいる素晴らしい土地があります といったところでしょうか)。この言葉をきっかけに神武天皇の東征は始まりますのでとても重要なフレーズなのですね。何よりこの章でまだ東征前から大和の素晴らしさを滔々と歌うのはこの塩土老翁の言葉をイメージしていたところもあるのでしょう。
( 2015.11.22 藤井宏行 )