An die Geliebte Gedichte von Eduard Mörike für eine Singstimme und Klavier |
恋人に メーリケ歌曲集 |
Wenn ich,von deinem Anschaun tief gestillt, Mich stumm an deinem heil’gen Wert vergnüge, Dann hör’ ich recht die leisen Atemzüge Des Engels,welcher sich in dir verhüllt. Und ein erstaunt,ein fragend Lächeln quillt Auf meinem Mund,ob mich kein Traum betrüge, Daß nun in dir,zu ewiger Genüge, Mein kühnster Wunsch,mein einz’ger,sich erfüllt? Von Tiefe dann zu Tiefen stürzt mein Sinn, Ich höre aus der Gottheit nächt’ger Ferne Die Quellen des Geschicks melodisch rauschen. Betäubt kehr ich den Blick nach oben hin, Zum Himmel auf - da lächeln alle Sterne; Ich kniee,ihrem Lichtgesang zu lauschen. |
君を見つめて深く心安らぎ 言葉もなくその清らかな美質を愛でていると 君の中に隠れ棲む天使の 微かな息づかいが確かに聞こえてくる そして驚きと訝しげな微笑が 僕の口もとに浮かぶ これは夢ではないのか 今や君によって限りなく心満たされ 身の程を知らぬただひとつの願いが成就したとは 深く、より深く僕の思いは沈みゆき 神聖な夜の彼方から 運命の泉の心地よいせせらぎが聞こえてくる 陶然として眼差しを上げ 天を仰ぐと・・・満天の星が微笑んでいる 僕はひざまずき、その光の歌に聴き入る |
喜多尾道冬先生の名訳を下敷きにしていた旧作を破棄して新たに訳出し直しました。かつて表面的 で安直な訳を作ってしまったことを非常に後悔しています。恋に恋するような安っぽい自己陶酔はこの詩の持つ切実さへの冒涜でしかないでしょう。まだまだ力及ばずとは言え、多くのメーリケ詩を訳した今ではこの詩の理念を以前より理解できるようになった気がします。
偶然の事ながら、ヴォルフのメーリケ歌曲集全53篇完訳成就の締めくくりにふさわしい内容の詩で終えることが出来ました。この場を借りて、これまでわたしに全訳を勧め励ましてくださった方に 心より感謝したいと思います。この詩を最初に訳した頃は、自分がヴォルフのメーリケ歌曲集の全訳を成し遂げられるなどとは夢にも思っていなかったのですから。本当にありがとうございました。
(2004.8.27 甲斐貴也)
( 2004.8.27 甲斐貴也 )