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Auf eine Christblume I    
  Gedichte von Eduard Mörike für eine Singstimme und Klavier
クリスマスローズに I  
     メーリケ歌曲集

詩: メーリケ (Eduard Friedrich Mörike,1804-1875) ドイツ
    Gedichte  Auf eine Christblume I

曲: ヴォルフ (Hugo Wolf,1860-1903) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Tochter des Walds,du Lilienverwandte,
So lang’ von mir gesuchte,unbekannte,
Im fremden Kirchhof,öd' und winterlich,
Zum erstenmal,o schöne,find' ich dich!

Von welcher Hand gepflegt du hier erblühtest,
Ich weiß es nicht,noch wessen Grab du hütest;
Ist es ein Jüngling,so geschah ihm Heil,
Ist's eine Jungfrau,lieblich fiel ihr Teil.

Im nächt'gen Hain,von Schneelicht überbreitet,
Wo fromm das Reh an dir vorüberweidet,
Bei der Kapelle,am kristallnen Teich,
Dort sucht' ich deiner Heimat Zauberreich.

Schön bist du,Kind des Mondes,nicht der Sonne;
Dir wäre tödtlich andrer Blumen Wonne,
Dicht nährt,den keuschen Leib voll Reif und Duft,
Himmlischer Kälte balsamsüße Luft.

In deines Busens goldner Fülle gründet
Ein Wohlgeruch,der sich nur kaum verkündet;
So duftete,berührt von Engelshand,
Der benedeiten Mutter Brautgewand.

Dich würden,mahnend an das heil'ge Leiden,
Fünf Purpurtropfen schön und einzig kleiden:
Doch kindlich zierst du,um die Weihnachtszeit,
Lichtgrün mit einem Hauch dein weißes Kleid.

Der Elfe,der in mitternächt'ger Stunde
Zum Tanze geht im lichterhellen Grunde,
Vor deiner mystischen Glorie steht er scheu
Neugierig still von fern und huscht vorbei.

森の娘、百合の一族よ
探し求めながら見ることの出来なかった花
荒涼とした冬の見知らぬ教会で
美しい花よ、わたしははじめてお前を見つけた

誰の手に育てられてお前はここで咲くのか
誰の墓を守るのか私は知らない
それが若者ならば彼は幸運だ
乙女であるならそれはよき定めだ

夜の林は雪明りに浸され
鹿がお前の近くでおとなしく草を食む
水晶のように凍った池のほとりの礼拝堂の側に
私はお前が生まれた魔法の国を探す

美しいお前は月の子であり太陽の子ではない
他の花々の喜びはお前を滅ぼすだろう
露と霜で覆われたお前の清い体を養うのは
香油のように甘く薫る天上の冷気だ

お前の黄金で満たされた胸には
誰にも気付かれずに芳香がひそみ
天使の御手がそれに触れると
この聖母の花嫁衣裳は香り立つ

聖なる受難を思わせる5つの真紅のしずくが
お前にはふさわしい
しかしクリスマスの頃には
子供っぽい淡い緑で白い衣装を飾るのだ

真夜中に月明かりの谷間に
踊りにゆく妖精は
お前の神秘的な輝きを遠くから眺め立ちどまり
やがてすばやく去ってゆく

メーリケはクリスマスローズに寄せる詩を二編書いていますが、ヴォルフはその両方に作曲しています。「エオリアン・ハープに」「春に」と通じる神秘的な抒情詩です。第1の方は6節にわたる歌詞としては比較的長い詩です。ヴォルフの付曲は非常に淡々とし、耳に覚えやすい旋律や効果的な強弱を欠いたもので、音楽だけ聴いた限りでは取り留めの無い印象を受けます。しかしこの素晴らしい詩を読み込みながら聴いてみると、言葉ごとにこまやかな表現が試みられているのに気付きます。まさに歌詞の内容を知らずに聴いては無意味に近い作品といえるでしょう。
ヴォルフは生前、自作の演奏会ではまず自ら詩の朗読を朗々と訴えるように行い、ついで歌曲の演奏に入ったそうです。また、自作について賞賛されても、詩についての言及がなければ非常に気分を害したといいます。この彼の代表作であるメーリケ歌曲集の作曲者自身による正式のタイトルは「ピアノ付き歌曲のためのエドゥアルト・メーリケ詩集:フーゴー・ヴォルフ作曲」なのです(参考文献:デチャイ著「フーゴー・ヴォルフ生涯と歌曲」)

( 2001.12.8 甲斐貴也 )


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