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Um Mitternacht    
  Gedichte von Eduard Mörike für eine Singstimme und Klavier
真夜中に  
     メーリケ歌曲集

詩: メーリケ (Eduard Friedrich Mörike,1804-1875) ドイツ
    Gedichte  Um Mitternacht

曲: ヴォルフ (Hugo Wolf,1860-1903) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Gelassen stieg die Nacht ans Land,
Lehnt träumend an der Berge Wand,
Ihr Auge sieht die goldne Waage nun
Der Zeit in gleichen Schalen stille ruhn;
 Und kecker rauschen die Quellen hervor,
 Sie singen der Mutter,der Nacht,in's Ohr
  Vom Tage,
 Vom heute gewesenen Tage.

Das uralt alte Schlummerlied,
Sie achtet’s nicht,sie ist es müd;
Ihr klingt des Himmels Bläue süßer noch,
Der flücht’gen Stunden gleichgeschwungnes Joch.
 Doch immer behalten die Quellen das Wort,
 Es singen die Wasser im Schlafe noch fort
  Vom Tage,
 Vom heute gewesenen Tage.

夜はゆっくりと地上に降り立ち
夢見るように山々の壁にもたれ
その目は今、黄金の時の天秤が二つの皿を平衡させ
時が静かにやすらうのを眺めている
   そしてせせらぎはより声高にざわめき
   その母親である夜の耳に歌いかける
     一日のことを
   過ぎ去った今日という日のことを

太古の昔から続くその子守歌を
彼女はとうに飽きてしまって聞こうともしない
彼女には速やかに過ぎ行く時の平衡をとる
大空の碧さの方がずっと甘美に響くのだ
   それでもせせらぎはいつまでも語り続け
   流れは眠りながらもなお歌い続ける
     一日のことを
   過ぎ去った今日という日のことを

メーリケ歌曲集からの1曲。これも「クリスマスローズに」と同傾向の神秘的な抒情詩です。たいていの訳では代名詞の”sie”(彼女)を”夜”にしていますが、”Mutter”母という語が出てくることからも、夜が女性とされている事を単に文法上の理由ではなく詩人の意と考えて直訳にしました。ヴォルフの付曲は淡々とした感じで、詩の素晴らしさを生かすことを主眼に書かれているようです。
この作品の録音は他のメーリケ歌曲集の曲に比べても少ない方です。古くはSP復刻のヴォルフ協会盤のアレキサンダー・キプニス(1933年)、帝国放送協会による戦時中の録音のエリザベート・ヘンゲン(1942年)がありますが、戦後の録音の中ではスタジオ録音とライブ録音合わせて4種のディスクがあるフィッシャー=ディースカウ(1.EMI、2.Orfeo、3.DG、4.M&A)が断然圧しています。が、面白いことに彼はNHKで放送された「シューベルトを歌う」という番組の中で、この曲を作曲が詩に負けている例として挙げていました。しかしわたしは、ゲーテ以来の抒情詩人とも目されるメーリケの代表作につけた作曲としては妥当な物と思います。この詩に付け加えるべきことはないのですから。

男声では他にジークフリート・ローレンツ、最近ハイペリオンから出た初のメーリケ歌曲全集に収められたゲンツの録音があります。女声ではファスベンダーがヴェルバの伴奏で録音していましたが(EMI)残念ながら現在入手困難です。

( 2001.12.14 甲斐貴也 )


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