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城ヶ島の雨    
 
 
    

詩: 北原白秋 (Kitahara Hakusyuu,1885-1942) 日本
      城ヶ島の雨

曲: 山田耕筰 (Yamada Kousaku,1886-1965) 日本   歌詞言語: 日本語


雨はふるふる、城ヶ島の磯に、
利休鼠の雨がふる。
雨は眞珠か、夜明の霧か、
それともわたしの忍び泣き。
舟はゆくゆく通り矢のはなを、
濡れて帆あげたぬしの舟。
ええ、舟は櫓でやる、櫓は唄でやる、
唄は船頭さんの心意氣。
雨はふるふる、日はうす曇る。
舟はゆくゆく、帆がかすむ。



これも「短夜」「あかい夕日に」と同じ出版社から雑誌掲載のために依頼され「白秋小唄集」より選ばれた詩にメロディがつけられています。ご覧頂ければお分かりのようにこの詩には梁田貞が作曲したものがあり、そちらの方が圧倒的に有名になっていますが、それはひとえにこの詩の日本情緒に梁田の方がずっと見事に寄り添って曲を付けているからだと、この山田のものと聴き比べると痛感させられるのです。この山田作品、梁田のメロディを聴き馴染んでいるからかも知れませんけれども、「このフレーズにこの旋律をつけるのか?」という違和感満載で、ある種「変」な作品に私には聞こえます。ギルムやシャックのドイツ語の詩を付けたらそのまんまリヒャルト・シュトラウスの歌曲と呼ばれても違和感のないようなバリバリのドイツリート。ちょっとこの詩にそれはないんじゃないの、と狭量な私などは感じてしまいます。それでも結構取り上げる人は多いので、まだ聴かれたことのない方は是非梁田メロディと比べてみてください。

( 2015.10.08 藤井宏行 )


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