TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Er ist's    
  Gedichte von Eduard Mörike für eine Singstimme und Klavier
彼は来た  
     メーリケ歌曲集

詩: メーリケ (Eduard Friedrich Mörike,1804-1875) ドイツ
    Gedichte  Er ist's

曲: ヴォルフ (Hugo Wolf,1860-1903) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Frühling läßt sein blaues Band
Wieder flattern durch die Lüfte;
Süße,wohlbekannte Düfte
Streifen ahnungsvoll das Land.
Veilchen träumen schon,
Wollen balde kommen.
- Horch,von fern ein leiser Harfenton!
Frühling,ja du bist's!
Dich hab ich vernommen!

春が青いリボンを
再び空にたなびかせると
甘美で懐かしい香りが
地に触れその胸ときめかす
菫はすでに夢見ている
間もなく花咲くことを
・・・聞いてごらん、遠くからかすかなハープの音が!
春、そうだおまえだ!
おまえの訪れをわたしは聴いたのだ!

この詩はシューマンの項で藤井さんが「今・・・」と題して訳されているのと同じものです。一般に「春だ」、「もう春だ」などの邦題で親しまれていますが、藤井さんが書かれている通り原題には「春」の語は使われていません。そっけない題ですが、詩人がわざわざ詩文に含まれない語を使ってつけたものですから、「春」の語をあえて使わないことを尊重したいとわたしも思います。代名詞のEr(英語のHe/It)を藤井さんはItとして訳していますが、わたしはひとひねりしてHeにしてみました。ドイツ語の文法上はたまたま「春」が男性名詞だから使われているだけのことかもしれませんが、最後の2行の春に対する呼びかけを、春を擬人化する表現と考えて人称代名詞としたわけです。

ヴォルフの作曲は非常に生き生きとした、春を迎える喜びが爆発するようなものです。好きな演奏はデビュー当時のボニーのみずみずしい歌声、隠れた実力派のツィーザク、ベテランのマティスと、どちらかというと女声向きの曲と思います。男声ではベーア。

( 2003.9.29 甲斐貴也 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ