唄 |
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日が光るのみ、幼き子が唄へば 「蝶々、蝶々」 かくうたへば。 草の間(ま)をさやぎて出づる水 また微風(そよかぜ)の 喜悦の喉。 誰(たれ)かうたふ、独りならで 遍(あま)ねき中に そが唄を。 はてしなき空のきはみ 在るとなし、光る顔 緑なる幻に。 ながるゝ白き野川の水 木も草も おのづからなる伴奏(ともあはせ)。 日が光るのみ、幼き子が唄へば 「蝶々、蝶々」 かくうたへば。 |
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冒頭のピアノがあの有名な童謡「蝶々」のメロディを弾いておやっと思わせますが、このメロディは歌詞の「蝶々 蝶々」のところでも今度は歌と共に奏でられ、そして中間部では転調されて流麗なピアノの中にこのメロディが見事にパラフレーズされて顔を出します。再び最初の幼子が歌う「蝶々」の場面が戻ってきて愛らしく曲を閉じます。春の訪れを喜びいっぱいに迎えるようなそんな素敵な曲です。
( 2015.09.08 藤井宏行 )