病める薔薇(そうび) |
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いつよりか、あはれ薔薇(そうび)よ 傷つきて汝(なれ)はかなしむ。 悪の蟲、樹よりつたひて わが花はおそれにふるふ。 あゝ花よ、戀の薔薇(そうび)よ 若くして汝は病みたり。 |
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山田耕筰-三木露風のコンビで「薔薇」といえば、清楚でやさしい「野薔薇」がとにかく有名ですが、同じ「薔薇」(もっとも音読みで「そうび」と読んでいますが)でありながらこの作品は詩もメロディも度肝を抜かれます。詩はご覧頂ければお分かりのようにとても耽美的で陰鬱。ウイリアム・ブレイクに同じようなテーマの詩があって雰囲気がとても良く似ていると思ったのですが、どうもその詩を参照して三木が書いた詩のようです。このブレイクの詩はブリテンが「セレナーデ」の中で取り上げておりますので、そちらを参照して見比べてみてください。 エレジー (ベンジャミン・ブリテン)
山田のメロディも、まるでアルバン・ベルクあたりの歌曲を参照したかのような無調の雰囲気がバリバリの出だしにまず驚きます。その雰囲気でしばらく歌は続きますが、中間部の「わが花は」のあたりからさすがの山田も辛抱しきれなくなったのでしょうか。いつもの抒情的なメロディが顔を出して穏やかに盛り上がって行きます。
かなり実験的な色合いの強い曲ですが、こんなものも山田の作品にはあったのか、と大変に興味深い作品です。
( 2015.09.05 藤井宏行 )