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Autrefois,Scène pastorale   Op.96  
 
オートレフォア 牧歌的情景  
    

詩: プロコペ (Hjalmar Johan Fredrik Procopé,1889-1954) フィンランド
      

曲: シベリウス (Jan Sibelius,1865-1957) フィンランド   歌詞言語: スウェーデン語


Ej av jaktens lekar i dungarna bland björk och tall
det ekar,ej höres hundars skall.
Pilen mot sin vana i kogret glömmer sig en stund,
Diana nu tager sig en blund.
Se armen sömnigt under kinden sträckt.
Hör dess jämna andedräkt
ur barmen blandas med fältets vind.
De skygga djuren få en timmes ro.
Nu i skogens gröna bo
gå trygga hare och hjort och hind.

Lätta molngardiner för solen fladdra då och då,
som skiner på himmel,middagsblå.
Djupt i bäckens bölja,som går bland vass sin krökta stig,
fördölja de snälla fiskar sig.
Är stunden,herde,icke kommen än,
då din flöjt ditt hjärtas vän
ur lunden lockar från får och lamm?
Herdinna,där du snörd och sirlig går,
låt ej dina unga år
förrinna - Dámon dig ber,träd fram!

狩りの響きではない 白樺と松の間の茂みの中の
こだまするのは 猟犬の吼え声でもない
獲物に向けられる矢は しばし矢筒の中で休息している
女神ダイアナはしばらく眠りについているのだ
ご覧 腕が眠たげに頬に伸ばされている
お聞き その安らかな吐息を
彼女の懐からの それは野の風と混じり合う
臆病な獣たちもしばしの安らぎを得たのだ
今森の緑の中で
安らかに歩く 野ウサギも牡鹿も牝鹿も

光の雲のカーテンは太陽を時折覆い
空を輝かせる 昼の青さに
川の波の下 葦の曲がりくねった道の間に
かよわい魚たちは身を隠している
ああ 時は 羊飼いよ まだ来ていないぞ
お前の笛で 愛する彼女を
森から誘い出すことの 羊や子羊を残して
羊飼いの娘よ そこでリボンを編んだり跳ね回ったりして
お前の若者を
逃がすなよ - ダモンがお前に告白してる 目の前に立って!


タイトルのAutrefoisというのはフランス語で「昔の」という意味ですので「むかしむかし」という邦題で呼ばれることもありますが、ガヴォット風の音楽といいプロコぺの書いた詞といいいかにもフランスのおとぎ話っぽさに満ちていますのでフランス語読みのままにしておきます。副題の「牧歌的情景」というのもフランス語のようですがこちらまでカタカナにするのもちょっと不親切な感じがしましたのでこちらは日本語訳で。
1919年、、ヘルシンキのゴスタ・ステン マン・ギャラリーの落成のために書いたものなのだそうで、ソプラノ・アルト一人ずつに小管弦楽の伴奏のついた作品です。ここで取り上げた歌詞で歌われることもあれば、歌詞のつかないヴォカリーズで美しく歌われる版もあります。またのちにピアノ独奏曲に編曲されて、別の二つのワルツと合わせ、作品96の「3つの小品」として出版されています。どの曲もあまりシベリウスらしさを感じさせない洗練された西欧っぽさですが(あざといほどの西欧風を狙って書いたのが却ってねっとりとした情感を感じさせるところなどはチャイコフスキーの音楽を思わせます)メロディはとても魅力的です。このオートレフォアも愛らしいガヴォットの間にねっとりとした旋律で歌が入り、またガヴォットの典雅さが戻るというロンド形式を取っており、歌の部分は特にヴォカリーズで歌われるとヴィラ・ロボスの「ブラジル風バッハ第5番」を連想させる濃密さです。

( 2015.08.29 藤井宏行 )


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