Hymn (Natus in curas) Op.21 |
讃歌(苦難の中の御子) |
Natus in curas,homo solis aestu Haurit excelsus calidum laborem, Non opem fessus miseris recusat Nocte quieta. Corporis tendens animisque vires Extimas,nusquam sibi parcet ipse. Blanda vix illum favet aura sortis Vitaque suavis. Posteri segnes opera fruuntur Denique exhausta memoresque laudant. Iam manus leto gelido solutas Fractaque corda. |
悩みのうちに生まれ 太陽の熱気の中 堂々と自らの苦役を成し遂げる どれほど疲れようとも 助けは乞わぬ 静かな夜にあっても 身も心も 力を張りつめ 限界まで その身を惜しむことはない 慰めを彼に 運命の風が与えることもない 人生の甘美さも 後世の者共はその成果を楽しみ ようやく最後に 思い出して讃えるが その時には 彼の手は冷たい死に融かされて 心臓は打ち砕かれてしまっているのだ |
演奏時間4分ほどのアカペラ男声合唱曲です。1896年にヘルシンキ大学の産科学の教授だったヨゼフ・ピッピングショールドの記念碑の除幕のために書かれました。詩のフリドルフ・グスタフソン(1853-1924)はフィンランドの文学者で政治家でもあった人だそうですが、ここではアカデミックにラテン語です。タイトルは讃歌とある場合と、歌詞の最初を取ってNatus in curasとされる場合とがありますが、イエス・キリスト的な人物描写ではありますけれども「苦難の中の御子」と訳すのはちょっと誤解を招くように思います。結構お祝いの音楽にしては皮肉で辛辣な内容の歌詞でもあり、そんなところがおそらくあえてほとんどの人が聞いても分からないラテン語で詞が書かれているところにもあるのかも知れません。そんな毒気もなんのその、シベリウスが書いたのは祝典にふさわしい厳かな曲でした。
( 2015.08.16 藤井宏行 )