をみな子よ |
|
女子よ 汝はかなし のたまはぬ汝はかなし たゞひとつ 一言のわれをおもふと |
|
北原白秋の二番目に出版された詩集「思ひ出」(1911)の中のサブセクション、61篇の短い詩からなる「斷章」の8番目の詩です。若い気鋭の詩人が憂愁の想いを気の向くままに書いたといった感じの奔放さが面白く、他にも歌にしたらよさそうな詩がたくさんありました(13番目の「なやましき晩夏(おそなつ)の日に」には橋本國彦の若き日の傑作がありますが)。この詩も何というか、こっちまでかなしくなってしまうような哀愁が何とも味があります。なお白秋の原詩では「女子」にはルビがふってありませんので、別に「じょしよ」と呼びかけても文句を言われる筋合いはないでしょうか。もっとも詩人が詩を書いた当時であれば「おみなごよ」としか読みようがなかったであろう気はしますけれど。ちなみに信時は読み間違えないようにタイトルは「をみな子よ」と仮名交じりにしています。
まだ若々しい畑中良輔が20年前にリリースされた信時潔歌曲集(Victor)の中で、情けなささえ感じさせる哀調で聴かせてくれるこの歌は絶品でした。私も自分の若いころを思い出して思わず涙です。
( 2015.04.28 藤井宏行 )