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La Captive   Op.12  
 
囚われた娘  
    

詩: ユゴー (Vicomte Victor Marie Hugo,1802-1885) フランス
    Les Orientales 9 La Captive

曲: ベルリオーズ (Louis Hector Berlioz,1803-1869) フランス   歌詞言語: フランス語


Si je n'étais captive,
J'aimerais ce pays,
Et cette mer plaintive,
Et ces champs de maïs,
Et ces astres sans nombre,
Si le long du mur sombre
N'étincelait dans l'ombre
Le sabre des spahis.

Je ne suis point tartare
Pour qu'un eunuque noir
M'accorde ma guitare,
Me tienne mon miroir.
Bien loin de ces Sodomes,
Au pays dont nous sommes,
Avec les jeunes hommes
On peut parler le soir.

Pourtant j'aime une rive
Où jamais des hivers
Le souffle froid n'arrive
Par les vitraux ouverts.
L'été,la pluie est chaude,
L'insecte vert qui rôde
Luit,vivante émeraude,
Sous les brins d'herbe verts.

J'aime en un lit de mousses
Dire un air espagnol,
Quand mes compagnes douces,
Du pied rasant le sol,
Légion vagabonde
Où le sourire abonde,
Font tournoyer leur ronde
Sous un rond parasol.

Mais surtout,quand la brise
Me touche en voltigeant,
La nuit,j'aime être assise,
L'œil sur la mer profonde,
Tandis que,pâle et blonde,
La lune ouvre dans l'onde
Son éventail d'argent.

もし私が囚われ人でなかったら、
この国が大好きになれたのに
そしてこのざわめく海も
このとうもろこし畑も、
この数え切れない星たちも
もしこの壁の暗がりに
影がきらめいていなかったなら
牢番のあの軍刀の

私はタタールの生まれではない
黒人の宦官が
ギターを調律したり
鏡を支えてくれたりするタタールの
ソドムの町を遠く離れて
わたしたちのいるこの国では
若い男の子たちと
夜でも語り明かすことができるのよ

でも私はこの土地も気に入っている
ここでは一番寒い真冬でさえも
冷たい風は入ってこないの
窓を大きく開けていても
夏の雨は暖かく
飛び回る緑色の虫たちは
エメラルド色に輝いている
緑の草むらの下で

私はコケのベッドの上で
スペインの歌を歌うのも好き
私の優しい仲間たちが
足を地面にこすりつけながら踊る
遊牧民の群れは
暖かな笑顔で
踊ったり囃したりするの
大きなパラソルの下で

とりわけ優しいそよかぜが
私の体をなでてくれるとき
こんな夜 ここに座ってるのが私は好き
瞳は 深い海を見つめ、
そこに青白く美しく
月が波の上に広げる
銀色の扇を

ベルリオーズという作曲家は、私にはどうも相性が良くなかったもので、そのあまり多いとは言えない歌曲作品も今まで食わず嫌いで全く聴いたことがなかったのですが、せっかくフランス歌曲を取り上げるのに無視するのもあんまりと思い、ドイツ・グラモフォンから出ている2枚組のベルリオーズ歌曲集を買って聴いてみたところ、今まで聴かなかったことが後悔されるような素晴らしい世界が広がっていました。
このCD、彼の代表作の歌曲集「夏の夜」こそ収録していませんが、作品番号のない若いころの作品(弱冠15歳!)から壮年期の作品まで万遍なく入っていて、その多彩な世界に触れるには打ってつけのアルバムです。
ベルリオーズの歌曲の特色ですが、同じ作品番号になる歌曲集の中でも、様々な伴奏形態があり(ギター・ハープ・ホルン・ピアノの組み合わせ)、また重唱曲が多いのが目立ちます。いわば仲間うちの気の置けないサロンのようなところで、ワイワイ楽しみながら演奏しているような雰囲気の曲がかなりの数を占めているのです。その意味で続けて何曲も聴いても決して飽きることがありませんし、アーンあたりのサロン風の洒落た歌曲と、シューベルトの湧き出でるような自然なメロディを足して2で割ったような味わいが、フランス語の美しい響きとあいまって実に良いです。
ご紹介したこの曲は、女声の独唱曲ですが、非常に美しいチェロとピアノの伴奏が付いています。
ユゴーも、オリエンタルムードの現実とは思えないようなシチュエーションの詩を書いていますので、夢ともうつつともつかない幻想的な世界が、声とチェロとの掛け合いに、寄り添うようなピアノの伴奏が付いたこの曲、実に見事な作品です。
このDG盤では、フォン・オッターのメゾソプラノで歌われています。
ピアノのガーベンとチェロのテディーンの熱演も相俟って、極上の室内楽のような味わいが素敵でした。

( 1999.11.17 藤井宏行 )


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