少年の日 |
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1 野ゆき山ゆき海辺ゆき 真ひるの丘べ花を敷き つぶら瞳の君ゆゑに うれひは青し空よりも 2 影おほき林をたどり 夢ふかきみ瞳を戀ひ あたたかき真昼の丘べ 花を敷き あはれ若き日 3 君が瞳はつぶらにて 君が心は知りがたし 君をはなれて唯ひとり 月夜の海に石を投ぐ 4 君は夜な夜な毛糸編む 銀の編み棒に編む糸は かぐろなる糸あかき糸 そのラムプ敷き誰がものぞ |
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信時潔の「沙羅」のために往年の名アルト歌手・柳兼子の録音を引っ張り出しましたら、そこに佐藤春夫詞・清瀬保二曲のとても素晴らしい曲が収録されておりました。
佐藤の1921年、30歳のときの「殉情詩集」の中におさめられた4篇からなるこの詩、少年の頃の純情な恋を回想するとても愛らしいもの、それに清瀬がとても暖かい、懐かしさあふれるメロディをつけました。柳の録音ではこのうち1と3がそれぞれ「少年の日1」「少年の日3」として別々の曲として歌われておりました。清瀬が2・4も曲を付けたのかどうかは調べ切りませんでした。全音から出ている清瀬保二歌曲集1の楽譜にもこの1と3だけが収録されているようですので(現物はまだ見ておりません)、もしかするとこの2曲だけなのかも知れません。4番目の詩など歌になったらさぞや魅力的だと思えるのですけれども...
詩は中央公論新社の日本の詩歌「佐藤春夫」より取って参りました。佐藤はこれをのちに何度か改定しておりますので、もし2・4も清瀬が曲をつけていた場合、歌詞がここに掲載したものと違っている可能性があります。その場合は判明次第修正しますのでご了承ください。佐藤ののちの修正ではこの4つの詩に順に春・夏・秋・冬のタイトルをつけたのだそうです。
( 2015.04.04 藤井宏行 )