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Kantata Vesna   Op.20  
 
カンタータ 春  
    

詩: ネクラーソフ (Nikolai Alekseyevich Nekrasov,1821-1877) ロシア
      Зеленый шум (1862)

曲: ラフマニノフ (Sergei Rachmaninov,1873-1943) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Idet-gudet Zelenyj Shum,
Zelenyj Shum,vesennij shum!

Igrajuchi,raskhoditsja
Vdrug veter verkhovoj:
Kachnet kusty ol’khovye,
Podnimet pyl’ tsvetochnuju,
Kak oblako,- vse zeleno:
I vozdukh i voda!

Idet-gudet Zelenyj Shum,
Zelenyj Shum,vesennij shum!

Skromna moja khozjajushka
Natal’ja Patrikeevna,
Vodoj ne zamutit!
Da s nej beda sluchilasja,
Kak leto zhil ja v Pitere...
Sama skazala glupaja,

V izbe sam-drug s obmanshchitsej
Zima nas zaperla,
V moi glaza surovye
Gljadit - molchit zhena.
Molchu... a duma ljutaja
Pokoja ne daet:
Ubit’... tak zhal’ serdechnuju!
Sterpet’ - tak sily net!
A tut zima kosmataja
Revet i den’ i noch’:
Ubej,ubej,izmennitsu!
Zlodeja izvedi!
Ne to ves’ vek promaesh’sja,
Ni dnem,ni dolgoj nochen’koj
Pokoja ne najdesh’.
Pod pesnju-v’jugu zimnjuju
Okrepla duma ljutaja -
Pripas ja vostryj nozh...
Da vdrug vesna podkralasja...

Idet-gudet Zelenyj Shum,
Zelenyj Shum,vesennij shum!

Kak molokom oblitye,
Stojat sady vishnevye,
Tikhokhon’ko shumjat;
Prigrety teplym solnyshkom,
SHumjat poveselelye
Sosnovye lesa;
A rjadom novoj zelen’ju
Lepechut pesnju novuju
I lipa blednolistaja,
I belaja berezon’ka
S zelenoju kosoj!
SHumit trostinka malaja,
SHumit vysokij klen...
SHumjat oni po-novomu,
Po-novomu,vesennemu...

Idet-gudet Zelenyj Shum.
Zelenyj Shum,vesennij shum!

Slabeet duma ljutaja,
Nozh valitsja iz ruk,
I vse mne pesnja slyshitsja
Odna - v lesu,v lugu:
Ljubi,pokuda ljubitsja,
Terpi,pokuda terpitsja,
Proshchaj,poka proshchaetsja,
I - bog tebe sud’ja!

ざわめきがやってくる 緑のざわめきが
緑のざわめき 春のざわめきだ!

戯れるように散ってゆく
突然 上からの風が:
ハンノキの茂みを揺らし
花粉を舞い上げて
雲のように - すべては緑になる:
空気も 水も!

ざわめきがやってくる 緑のざわめきが
緑のざわめき 春のざわめきだ!

慎ましやかだった俺の女房
ナタリア・パトリキェーヴナは
面倒なんか引き起こす奴じゃなかった!
なのに災厄は起きちまったのさ
夏の間 俺はサンクト・ペテルブルクに出かけてた...
女房は自分でも言ったのさ 馬鹿だったと

小屋の中で 裏切り女め 間男と一緒だったのさ
冬に閉じ込められて
俺の厳しい視線に
見つめられ - 女房は黙ったままさ
俺も黙ったままだった...そして残酷な思いつきが
俺の心を静めてはくれなかったんだ
いっそ殺すか...この心は悲しむだけだ!
では耐えるのか - そんな力はない!
そんな時 髪振り乱した冬の奴が
叫んでたんだ 昼でも夜でも:
殺せ 殺すんだよ 裏切った女はね!
悪い女は やっちまえ!
さもなきゃ 一生苦しむことになるよ
昼も 長い夜も
あんたは安らぎを見つけられないんだ
冬の吹雪の歌声が
残酷な考えを強めて行く -
俺は用意したんだ 鋭いナイフを...
だが 突然春が忍び寄って...

ざわめきがやってくる 緑のざわめきが
緑のざわめき 春のざわめきだ!

まるでミルクが降り注いだように
桜の果樹園はたたずんで
静かにざわめいている
暖かい太陽に暖められて
陽気にさざめいている
松の林も
そして新緑のそばで
新しい歌をつぶやいているのは
蒼ざめた葉のリンデの木々
それと白い樺の木だ
緑のお下げ髪をした!
小さな葦もざわめき
背の高いカエデもざわめく...
ざわめくのだ 新しいやり方で
新しい 春らしく...

ざわめきがやってくる 緑のざわめきが
緑のざわめき 春のざわめきだ!

残酷な考えが弱まって行く
ナイフは手からすべり落ちる
そして俺に聞こえるのは歌だけだ
ただひとつの - 森の中でも 草原でも:
愛せよ 汝ができる限り
耐えよ 汝ができる限り
赦すのだ 汝ができる限り
そして - 神が汝をお裁きになるだろう!


ネクラーソフの詩「青草のざわめき(1863)」による バリトン独唱に混声合唱と管弦楽伴奏によるカンタータ、1902年の作曲です。冒頭の春の喜びにあふれた長いオーケストラの序奏と合唱は、しかしながらバリトンソロによるモノローグに入ったとたんにかなりドロドロのドラマが始まります。不倫がバレた妻と二人っきりの冬に閉じ込められた生活はかなり精神的に追い詰められた厳しいものでしょう。重苦しいロシアオペラのワンシーンのような音楽はしかし、春の再びの訪れと共にまた穏やかな表情を取り戻し、そして和解へと繋がって行くのでした。合唱と管弦楽によって歌われる春の再訪のシーンの盛り上がりはお見事(彼のピアノ協奏曲のラストの部分のクライマックスの作り方そのままです ある意味あざといとも言えるかも知れませんが)。最後はバリトンのソロの赦しの言葉と共に穏やかな合唱が力強く音楽を締め、そして管弦楽の余韻が静かに曲を閉じさせます。
幸せ一杯の春という訳には行きませんが、こういう春もまたあるのですね。

( 2015.03.28 藤井宏行 )


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