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Gleich und Gleich   Op.12-4  
  4 Lieder
似たもの同士  
     4つの歌曲

詩: ゲーテ (Johann Wolfgang von Goethe,1749-1832) ドイツ
      Gleich und Gleich (1814)

曲: ウェーベルン (Anton Webern,1883-1945) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Ein Blumenglöckchen
Vom Boden hervor
War früh gesprosset
In lieblichem Flor;
Da kam ein Bienchen
Und naschte fein: --
Die müssen wohl beide
Für einander sein.

小さな釣りがね草が
地面から現れ
すぐにはじけて
可愛らしい花となる
するとやって来る 小さなミツバチが
ミツを吸うのだ そっと
彼らは二人とも 間違いなく
お互いのためにあるのだ

ゲーテの大変有名な詩で、どのゲーテ詩集にも載っていると思いますし、またヴォルフのゲーテ歌曲集でも取り上げられていますけれども、思いっきり異色な作曲家として、このかつての前衛音楽の闘士ともいえるアントン・ウエーベルンがなんとこの詩に曲を付けていることも注目しないではいられないでしょう。この曲、1916頃の作曲といいますからまさに彼が12音技法にハマり始めた頃の作品です。が、確かにバリバリの前衛音楽であることは確かなのですけれども、何か滲み出てくるユーモアというか、春の喜びといったものが無機的な音の中からほのかに感じられて不思議な仕上がりになっています。解説書では「ワルツの亡骸が見え隠れしている」とありましたが、そういわれてみればそんな感じもしなくはないかなあ、というところもあり、まあ聴いてみるのもそれなりに悪くないとは思いますが。彼はゲーテの詩の他にも、李白の詩の独語訳とか子供の不思議な角笛とか、割とよく作曲される詩にも曲を色々付けていますので(彼の作品には意外と声楽曲が多いのが面白い)、前衛音楽に抵抗のない方は是非聴いて見られてはいかがでしょうか?

詩の”Gleich und Gleich”というのは、どの詩集を見ても「お似合い」という言葉で片付けられていますが、結構訳しにくいところです。神様が互いを支え合うようにと、釣り鐘草には蜂を、蜂には釣り鐘草を与えて下さった自然の妙が、さらっと語られています。

C.エルツェのソプラノに、E.シュナイダーのピアノ伴奏のドイツ・グラモフォン盤、あるいは現代音楽系歌曲の名手、ドロシー・ドロウの入れたもの(確かKoch)などもありそれなりに面白いですが、このロマンの残滓を感じ取るのであれば、Berlin Classicのトレクスレラー(Sop)が一番かも知れません。

( 2003.3.24 藤井宏行 )


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