Tableau1 Karelia |
第1景 劇音楽 カレリア |
Oi Ukko Ylijumala, Tati taatto taivahinen, Tee nyt mulle suorat sukset, kapeaiset kalhuttimet, joilla hiihteä hivitän poikki soien poikki maien hiihän kohti Hiien maita poropeuran polkemille Lähe nyt miehistä metsälle Urohista ulkotöille Tapiolan tietä myöten Tapion talojen kautta Terve vuoret terve vaarat Terve kuusikot komeat Terve haavikot haleat Terve tervehyttäjänne Miesty metsä kostu korpi Taivu ainoinen Tapio Saata miestä saarekselle Sillekummulle kuleta Jos’t on saalis saatu. |
おおウッコ 至高の神 天におわします父よ 今私にまっすぐなスキーを作り給え 細身のスキーを それで上手に滑ろうぞ 沼地を そして山野を 悪魔の国に向かって滑るのだ トナカイの足跡を追って 集まれ 男たちよ 森の中へ 外の仕事を始めよう タピオラの道を通り タピオの家々をすり抜けて ようこそ山々よ ようこそ坂道よ ようこそ 巨大なモミの木よ ようこそ 灰色のハンノキの林よ ようこそ われを歓迎する者たちよ やさしくあれ 森よ 穏やかであれ 荒野よ 平穏なれ タピオよ 男を島へと導きたまえ あの丘へと導きたまえ 獲物が手に入れられるように |
カレリアというのは現在のフィンランド南東部とロシアの北西部にまたがる地域、民族叙事詩「カレワラ」の故郷でもあります。
ロシアの支配下にあった19世紀末のフィンランドはロシア化を進める動きが激しくなり、フィンランド人との軋轢が激しくなりました。そんな折の1893年11月、ヘルシンキ大学のカレリア地区出身の学生会が開催した宝くじパーティは、名目こそ宝くじの収益をあてにしたカレリア地区の教育振興でしたが、他方フィン民族の愛国心を鼓舞するための集会としての意味合いも色濃くあったようです。
このパーティでの呼び物が、カレリアのさまざまな史実に基づく8篇の歴史劇で、その劇音楽の作曲を依頼されたのはその前年、鮮烈な「クレルヴォ交響曲」で名を馳せたシベリウスでした。
そこから編まれた3曲からなる組曲「カレリア」はシベリウスの管弦楽作品としてよく聴かれていますが、全曲はのちに作曲者自身によって大部分が破棄されてしまい、近年作曲家カレヴィ・アホによって復元されたものが1997年、ヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団によって世界初録音されています。
8つの史劇のうち一番最初の第一景「カレリアの民家・開戦の告知」には二人の独唱者による掛け合いで「カレワラ」の第14章「レミンカイネンの死」の初めのレミンカイネンの台詞の部分が歌われています。ヴァンスカ指揮の盤では男声二人、もうひとつの録音であるオッリラ=ハンニカイネン指揮タンペレフィルの98年盤(こちらの復元はヨウニ・カイパイネンによって行われています)では女声二人、それぞれクラシック発声でなく民謡のような歌声で味わい深く歌われています。
( 2015.02.21 藤井宏行 )