雨の言葉 |
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わたしがすこし冷えてゐるのは 糠雨のなかにたつたひとりで 歩きまはつてゐたせゐだ 私の掌は 額は 湿つたまま いつかしらわたしは暗くなり ここにかうして凭れてゐると あかりのつくのが待たれます そとはまだ音もないかすかな雨が 人のゐない川の上に 屋根に 人の傘の上に 降りつづけ あれはいつまでもさまよひつづけ やがてけぶる霧にかはります…… 知らなかつたし望みもしなかつた 一日のことをわたしに教へながら 静かさのことを 熱い昼間のことを 雨のかすかなつぶやきは かうして 不意にいろいろにかはります わたしはそれを聞きながら いつかいつものやうに眠ります |
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ヴェルレーヌの詩につけたドビュッシーの歌曲を思わせるような詩と音楽です。溝上日出夫歌曲集CDで桑原知子さんの熱唱で聴くことができました。ピアノの水谷真理子さんも好演です。最後の消え行く余韻の残し方など最高でした。
( 2014.11.14 藤井宏行 )