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浅き春に寄せて    
 
 
    

詩: 立原道造 (Tachihara Michizou,1914-1939) 日本
    優しき歌 I  浅き春に寄せて

曲: 高木東六 (Takagi Touroku,1904-2006) 日本   歌詞言語: 日本語


今は 二月 たつたそれだけ
あたりには もう春がきこえてゐる
だけれども たつたそれだけ
昔むかしの 約束はもうのこらない

今は 二月 たつた一度だけ
夢のなかに ささやいて ひとはゐない
だけれども たつた一度だけ
そのひとは 私のために ほほゑんだ

さう! 花は またひらくであらう
さうして鳥は かはらずに啼いて
人びとは春のなかに笑みかはすであらう

今は 二月 雪の面(おも)につづいた
私の みだれた足跡……それだけ
たつたそれだけ――私には……



この曲も高木のロマンティックな、ある意味バタくさささえ感じられるメロディが立原の感傷的な詩にマッチして何とも美しい歌になりました。シャンソン歌手が歌ったら実に映えそうですが、まだそういうのは聴けておりません。鮫島有美子さんの歌が比較的聴ける機会があるかとは思いますのでぜひ探してみてください。ヘルムート・ドイチュの絶妙な伴奏を含めて、彼女の歌った日本歌曲の中でも一・二を争う絶唱です。

( 2014.11.07 藤井宏行 )


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