TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Ja prigvozhden k traktirnoj stojke    
  Peterburg
酒場のカウンターに釘付けになり  
     ペテルブルク

詩: ブローク (Aleksandr Aleksandrovich Blok,1880-1921) ロシア
      Я пригвожден к трактирной стойке

曲: スヴィリードフ (Georgi Vasilievich Sviridov,1915-1998) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Ja prigvozhden k traktirnoj stojke.
Ja p’jan davno. Mne vse - ravno.
Von schastie moe - na trojke
V srebristyj dym uneseno...

Letit na trojke,potonulo
V snegu vremen,v dali vekov...
I tol’ko dushu zakhlestnulo
Srebristoj mgloj iz-pod podkov...

V glukhuju temen’ iskry mechet,
Ot iskr vsju noch’,vsju noch’ svetlo...
Bubenchik pod dugoj lepechet
O tom,chto schastie proshlo...

I tol’ko sbruja zolotaja
Vsju noch’ vidna... Vsju noch’ slyshna...
A ty,dusha... dusha glukhaja...
P’janym p’jana... p’janym p’jana...


俺は釘付けだ 居酒屋のカウンターに
ずっと長いこと酔いつぶれているが 気にしねえ
持ってかれちまった 俺の幸せなんか トロイカに乗せられ
白銀の雪煙を上げて

トロイカに乗って飛び去り 埋もれちまったぜ
時間の雪の中に 何世紀も彼方に
そして俺の魂は溺れちまったぜ
白銀のもやの中に 蹄の下の

漆黒の闇の中に火花が飛び散り
その火花のため夜通し 夜通し照らされている
頸木の下の鈴がぶつぶつ言っている
幸せが過ぎ去って行っちまったってことを

そして黄金の拍車だけが
夜通し目に浮かび 夜通し聞こえてくる
そしてお前 俺のうつろな魂は
酔って 酔って 酔って 酔ってるんだ
(FUJII訳 2015.05.02)


酒場のカウンターに釘付けになり
長い時間を酔っ払って過ごしてきた私は
万事に無関心だ
私の幸せはあそこにある、トロイカの上に
銀色のもやの中に引き込まれる

トロイカの上で飛び交い、消え去り
雪と降る時間の中で、世紀を越える中で
ただ魂だけが上空を漂う
蹄鉄の下から舞い上がる銀色のもやとともに

火花が漆黒の闇に飛び散る
火花であるがゆえに一晩中あかく
橇の鈴が軸木の上でつぶやく
今や過ぎ去った幸せを

さらに黄金の馬具だけが
夜通し目に止まり耳に届き
そしてお前、私の魂、私の盲いた魂
酔っ払って、正体も無く酔っ払って
  (tora 訳)

これは正式な録音が手に入らず、歌詞も不明であったところ最近ネット上に録音(有料会員配信のみ)と英訳を発見したのでそちらから重訳。
ブロークは19世紀末のロシアの象徴派詩人。スヴィリードフ(1915-1998)は彼の詩をもとに幾つも作品を書いている。スヴィリードフを最初に聞いたのが今でも人気の高い農民詩人、エセーニン(一時期イサドラ ダンカンの夫だった)の詩による「さまようロシア」だったのでもっと健康的なイメージだったのだが。ブロークは全ソ作曲家連盟議長の作曲家らしくない。この曲はよく聞かれる酔っ払いの歌の系譜からも少し離れた小宇宙を感じる。曲はシンプルで有節歌曲風、歌も伴奏も淡々としている。最後の酔っ払いめ、と自分に叫ぶところは曲も叫ぶのだが、どうしようもない酔っ払いと繰り返すところはcry outせず、もう絶望を通り越して諦念に向かっているかのよう。
でもまだ人生を諦めらきれない時はどうすればいいのだろう…。
(2001.11.07 有松 “tora” たかね)

作曲者生誕100年を記念してこの曲を含む歌曲集を順次取り上げるにあたり、ロシア語の原詩から訳し直しました。記事と英語訳の有松さんと連絡が既に取れなくなっておりますので勝手に行わせて頂いておりますがご了承ください (2015.05.02 藤井)

( 2001.11.07 有松 “tora” たかね )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ