ある日 歌曲集「啄木に寄せて歌える」 |
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ある日 ふと やまひを忘れ 牛 の啼(な)く 真似をしてみぬ 妻子(つまこ)の留守に |
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2曲目からはめったに聴かれることのない曲たちですが、「初恋」と遜色ない美しさと魅力で迫って参ります。
これは自らの病を壮絶に詠みこんでいる「悲しき玩具」からですが、その中にあって一瞬重苦しさを忘れさせてくれるとてもお茶目な和歌。歌もおどけて楽しげです。山田耕筰の「あわて床屋」のような軽快な伴奏にのって歌われる歌がとても印象的。
これも含めて、越谷の啄木歌曲は言葉をあちこちで繰り返して和歌の57577に囚われていないこと。自由な新体詩につけた近代歌曲のようになりました。ほとんど日本情緒に引きずられていないところも素敵です。
( 2014.10.25 藤井宏行 )