片しぶき |
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さらり さらりと さらり さらりと 出船の港 しぐれまじりの 風もよひ どんと どんどと どんと どんどと はたうつ波に ぬれりゃ出船の ろもしなる ままよ ふれふれ ままよ ふれふれ 港もくもれ 艫べそ泣かせの 片しぶき |
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長崎出身の詩人・作詞家 西岡水朗(にしおかすいろう 1909-1955)のデビュー作なのだそうです。彼は中山晋平などが活躍した新民謡というジャンルの作詞家として、あるいは歌謡曲の作詞家として活躍しました。昭和12年に林伊佐緒らが歌ってヒットした「男なら」(その後昭和40年に水原弘がカバーしましたので今の50〜60代の方もご存じの曲ではないかと思います)が代表作でしょうか。
作曲の杉山長谷夫は「出船」「忘れな草」「花嫁人形」といった、これも抒情歌とも歌謡曲とも取れるような歌をたくさん書いた人です。纏綿たる日本情緒の上にちょっぴり近代のスパイスをまぶした(彼の本業はヴァイオリニストで、西洋クラシックの曲をバリバリ演奏していた人だったのだそうで)曲は捨てがたい味わい。ごくわずかの作品を除いて忘れられてしまっていますがそれもとても勿体ないところです。
この曲は歌詞は典型的な新民謡ですが、音楽はその雰囲気もにじませながらもあくまで西欧風の歌曲です。ピアノ伴奏なんかはラジオ体操のメロディを連想してしまいました。聴いていてとても爽快感あふれる楽しい歌でした。
( 2014.10.25 藤井宏行 )