朱の小箱 抒情小曲集 |
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君がかはゆげなる卓(つくゑ)のうへなる いろも朱なる小箱には なにをひそめたまへるものなりや われきみが窗(まど)べをすぎむとするとき 小箱まづ目にうつり こころおどりてやまず そは、やはらかきりぼんのたぐひか もしくば うらわかき娘ごころをのべたまふ やさしかるうたのたぐひか。 |
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これは「抒情小曲集」からではなく、1923年出版の詩集「青き魚を釣る人」より。微笑ましい恋の歌です。彼女の持っているものに惹かれずにはいられない少年の恋心。女の子の持ち物も90年前にも関わらず今でもありそうなものばかりですね。
言葉づかいが古めかしくなければ、今の乙女たちにももっと響く詩ではないでしょうか。清水のつけたメロディも、NHKの「みんなのうた」にでもしっくりくるような耳になじむもの、この詩の魅力を最大限に引き出しています。最後のおどけたユーモアもとても素敵です。
( 2014.10.24 藤井宏行 )